古い文書や書籍などの保存・研究・公開を目的とする五つの特殊文庫。それらが手を取り合った初の連携展示「特殊文庫の古典籍」が都内で開催中だ。五島美術館内の大東急記念文庫(東京・上野毛)が、創立70周年を記念した古典籍の企画展を実施しようとしたことを機に、他の4文庫に声をかけ、連携が実現した。
東洋文庫ミュージアム(東京・本駒込)の「漢字展―4000年の旅」(9月23日まで)は中国・清の「科挙答案」の実物や古今の書籍を通して漢字文化の成り立ちを考える展覧会。静嘉堂文庫美術館(東京・岡本)の「書物にみる海外交流の歴史」(8月4日まで)は、幕末に大坂の適塾にもあったとされる「道訳法児馬」(長崎ハルマ)などの辞書類や「天球全図」が見ものだ。
一方、慶応義塾大学三田キャンパス・斯道(しどう)文庫の「センチュリー文化財団寄託品展覧会 本の虫・本の鬼」(6月28日まで)では、書物ととりつかれた人たちの思いを古典籍や蔵書印から追いかける。大東急記念文庫の創立70周年の特別展示(10月20日まで)は「第3部 書誌学展Ⅰ」を8月4日まで開催中だ。
神奈川県立金沢文庫(横浜市)は、7月20日~9月16日に特別展「東京大学東洋文化研究所×金沢文庫 東洋学への誘い」を開催する。
「中国の詩文を集めた『文選』などは、異なる写本を別々の文庫で見られます。ゆるやかな連携の楽しさを味わってもらえれば」と東洋文庫の担当者は話す。
開催会場を回ると、どこも人間と書物の関わりを物語る濃密な空気に満ちていた。見せ方の工夫を比べてみるのも一興だ。(編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2019年6月26日掲載
編集部一押し!
- 著者に会いたい 坪田侑也さん「八秒で跳べ」インタビュー 21歳が放つ王道青春小説 朝日新聞読書面
-
- ニュース 本屋大賞に「成瀬は天下を取りにいく」 宮島未奈さん「これからも、成瀬と一緒なら大丈夫」(発表会詳報) 吉野太一郎
-
- 本屋は生きている ヤンヤン(東京) 急な階段の上で受け取る「名も無き誰かが残した言葉」 朴順梨
- インタビュー 北澤平祐さんの絵本「ひげが ながすぎる ねこ」 他と違うこと、大変だけど受け入れた先にいいことも 坂田未希子
- インタビュー 「親ガチャの哲学」戸谷洋志さんインタビュー 生まれる環境は選べない。では、どう乗り越える? 篠原諄也
- 小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 【特別版】芥川賞・九段理江さん「芥川賞を獲るコツ、わかりました」 小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。 清繭子
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社