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滝沢カレンの「吉里吉里人」の一歩先へ

撮影:斎藤卓行

ここはとある時代にあった村の話だ。
町というよりは村に近いここは吉里吉里村。
誰にもしられてはいないひっそりと謙虚な村だ。

村人は20~50人くらいでみんな顔見知り。
だが、この村にはとある不満があった。
それは「あまりに原宿から離れている」ということ。

村とはいえ、この村には何故か、10~30代前半しかいないイケイケな人間が集まる村だ。
若者たちは、日々草や木を使いカラオケごっこをしたり、原宿を夢見て葉っぱでクレープを真似てみたりそんな日が続いていた。

「あぁ原宿はいいよなぁ」
今日も若者たちは空を見上げて原宿の良さを語る。

「なんでここが原宿じゃないのかしら」
「俺は原宿で流行っているビオガ・・・・・・?みたいなジュースのんでみてぇんだ」
「あらやだ。ダビオガなんてそんなガタガタしたような名前じゃなかったはずよー!」
「お? そうだったかいな?」
「えぇっとたしか・・・・・・タピオガ?」
「とにかくそんな名前だ!」

息を揃えて結局は、「はぁ~いいなぁ・・・・・・」と空を見上げながら声が揃った。
とな具合に、ラチの明かない話で昼から夜まで過ごしていた、若者たちだった。
若者しかいない村はどんどんどんどん東京原宿への夢は膨らみ続け弾けそうだった。

ある日、東北では珍しく「原宿のいま」というチラシが空から大量に舞ってくる。
若者たちはお昼ご飯の笹団子を頬張っていたが御構い無しに投げ出し、原宿のチラシを崩れそうなほどひっぱり倒した。

そのチラシには「誰が言おうと原宿はまさしく夢が詰まった町!」というだいだいてきな太字に、キラキラ若者が笑いながらクレープやタピオカ片手にプリクラやイケてる服を着飾り原宿の街をかかげているようなチラシだった。
まさに、吉里吉里村の若者にとっては目をダイヤモンドに輝かせたって負けない輝きで食いつくように見ていた。

「うぉーーーーーー!!! やっぱりいいよなぁ。原宿は! 俺たちの村からなんてったってこんな離れてるんだろうか」
「この村には電車もバスもないからね、行き方すら知らないわ・・・・・・」
「一体どのくらい離れているのかしら」
「俺たちって日本のどのあたりにいるんだろう」
と若者たちはガヤガヤしはじめた。

たしかにこの村の者たちは誰一人村から出たことのあるものはいず、東京からの来客もかつていなかった。
東京の場所もどれだけの距離かも知る人はいなかった。
「俺たちの村って一体どうしたら出れるんだろう?」
「村から出てみたいとは考えてみたことあったけど、どうやって出ようかは考えたこともなかったわね」

若者たちは考えはじめた。
この村は一体なんだろうと。
そして、村から出るにはどんな方法があるのだろうかと。

「なぁ! みんなで村を出る作戦をたてないか?!」
若者たちはこの言葉に目を輝かせた。
「それは、いいわ!! みんなでいけば怖くないわね」
この一言で一斉にみんなは気持ちをまとめ、山を越え、海を渡り隣の島までいく作戦を作った。

村人たちは、原宿に行けるワクワクでいっぱいいっぱいだった。
そして電車も通ってない村から出るには、まずは山を越えなければならなかった。
はるばる立ちはだかるどでかい山はこの村のトレードマークだ。

山に入るとさっきまで太陽があれだけ笑っていたのに急激に暗くなり、寒くなる。
「この山って本当おっかねぇよなぁ」
「そうそう。だから登る気失せて誰も登らないのよねぇ」
若者たちはぶつぶつ文句を言い始める。

先に進むとそこには人間が集まりなにやら話し込んでいる集団がいた。
若者たちはびっくりした。
「見てみろよ!!! 俺たち以外の村人がこの山にはいたのか!!! 話しかけてみようぜ」
無邪気にリーダーを務める若者はいった。

若者が小走りでその集団に近付く。
すると、とある一人が若者に気づき目をギョッとさせた。
「おい、吉里吉里人が・・・・・・!」
集まっていた集団は声をかけあいみんなギョッとした目でこちらを見ると、猛ダッシュで集団は山に消えていった・・・・・・。

若者たちは、口をポカンとあけた。
「私たちが隣の村に来るのがまずかったのかしら??」
「初めてこの山登ったけど人が居たんだなぁ~」
「へんなのー! なんだよみんなして逃げちまってさぁ」
と、せっかくの手がかりだった集団は逃げてしまったため、また山を進むしかなかった。

まもなく行くと、そこには、綺麗に丸太で積み上げられたようなおっきな壁があった。
丸太で道を塞がれているのだ。
若者たちは近寄った。
「なんだなんだ? こんな丸太、自然にこうはなるかよ?」
「ならないわよね。なんか不自然だわ」

誰一人もこの山を登った若者がいなかったためみんなは戸惑ったが、山を越えるしか方法はなかったため、丸太を若者たちでよじ登り越えることにした。
無事に高々と積まれた丸太をえると、まだまだ坂道が続いていた。

ひたすら山道を歩いて行くと・・・・・・お次は、落ち葉の山がひたすら山道を塞いでいた。
「今度はなによー? これ落ち葉で行きにくい」
「膝までうもっちゃうなんて一体どれだけ落ちたんだよ、葉っぱは」
と、また騒ぎ始まった。

なかなか進まない山道にみんなイライラと疑問を抱いていた。
「一体俺たちの山はいつまで続くんだよ~」
「もはや下れるのかしら?って感じよね」
「こんなになるまで葉っぱを放っておくなんて不思議なもんだぜ」
「それにしても、あっ、歩きにくいわ~」

足をボスボスと枯れ葉に埋めながら若者たちは必至に山道を登って行く。
若者たちは、ただただ夢の原宿に行きたいという気合いだけでこのおっきな山を越えようとしていたのだ。
落ち葉の足を取られ道もどうにか越えるとそこには、地図のような看板が道の端に置かれていた。

若者たちは、走りその看板を食い付くように眺めた。
「???」
若者たちは首を傾げた。
そこにはなんだかおかしな地図がかかれていた。

「ここは確か日本の東北のほうだよなぁ?」
「う、うん。そのはずよ?」
「これは誰かのいたずらか?」
若者たちは理解に困った顔でざわつき始めた。

そこには木の板にここの場所のような地図がかかれていた。
そこには、 吉里吉里村と大きく書いてあり、地図にはどうやら近くに海もなければ近くに街や村すらなかった。
街の説明というよりは吉里吉里人が雲に乗ったような絵が書いてあった。
若者たちは意味のわからない絵と絵本のような地図を不思議に思ったが、きっと誰かの楽しいしかけだろうと気にせず笑いながら見過ごそうと思った。

地図も背中にまた山道を歩き始めると、今度は霧のかかったような場所に差し掛かかった。
なんだこの霧は・・・・・・。
若者全員が不安そうな顔になった。

「おい、ここからは目線がきわどいから、みんな下気をつけろよ」
と、リーダーの若者がとんでもない声を出した。
「わかったー!」
とみんながリーダーの気にかけを気にした。

霧を抜けると、若者たちは驚愕した!!!!!!!!!!!!!
なんと、霧を抜けるとそこは、高い高い空の上だった。
下を見ると霧がさらにかかりその下には海、山、田んぼ、そして街がそこには広がっていた。
若者たちは初めて山のてっぺんにたったので、この景色を見るのも初めてだったのだ。

絵:岡田千晶

「え、」
若者たちは声が出なかった。
「な、なんで、雲の上にいるの」
頭が霧のように真っ白になり、自分たちがいかに誰とも会わずに生きてきたことをゆっくり納得するように。

すると 草むらの背後からヒゲを伸ばしたやや偉そうな巨大なおじいさんが出てきた。
もちろん若者たちは初めてみる人だ。
なんてでかい人なんだと若者たちは思った。

「やぁ、みんな。これを見られちゃあ説明しないわけにはいかんね。
実はここは見ての通り雲の上にある村、吉里吉里村だ。
君たちが夢見た東京は遥かに遠く、どんな手を使ってもいけない。
なぜなら君たちがいる場所は時間がゆっくりで、下の見えてる世界はとっても時間が早いんだ。
だから君たちが下にいけたとしても、もう人間たちは絶滅しているだろうな」

若者たちは聞く言葉全てが初めてすぎて、息を呑むしかできなかった。
「だから君たちがどっからか知らないが地上の情報を知られてからは、なるべく驚かせないようにしてきたんだ 」
若者たちは目を合わせて自分たちは原宿にはもちろん、地上にすら行けない事実に泣き出す若者もいた。
さらに、ヒゲのおじいさんは続けた。

「君たちが地上と違う点は、君たちは異常に小さいんだ。
わたしの大きさが地上と同じだ。
そして歳をとるのが極端にゆっくりなんだよ。いっきにこんなに飲み込むのは大変だろうけど、見られちゃしかたない。
君たちはここの吉里吉里村を地上にバレないように生きていくしかないんだ」

「なぜ僕たちは雲の上にいるんですか?」
若者たちは素直な疑問がこぼれた。
「君たちは元はと言ったら地上で私たちが見つけたんだ。海の渦潮の近くでもがく赤ん坊を見つけてな。それはそれは驚いたさ。
助けようと海に入ると渦潮に真っ逆さまに飲み込まれてしまってね」
若者たちは目をまん丸くして聞いていた。

「そのまま私と助けた仲間たちと君たちを抱いたままあっというまにここにきてしまったんだ。もう地上では300年くらい経ってるんじゃないかなぁ。ハハ。
ここではまだ15年くらいしか経ってないけどね」

若者たちは自分たちがふつうの人間でないことも同時に知った。
「俺たち、まさかそんなんだったなんて」
「だからきっと下の情報は、時空を越えて海にゴミとして落ちていたチラシが渦潮に巻き込まれてここに辿り着いたんだろう」

「おじさんはじゃあこの村をずっと守ってくれていたの?」
「あぁ。この村にきて、吉里吉里村だという看板を見て知って、君たちは僕たちがいなくてもスクスクたくましく育つし、あまりこの子達に余計な手を出して驚かれないようにと話し合って今になったんだ」
「だから私たち以外の人を私たちは見てなかったのね」
吉里吉里人と地上人が分かりあった時間だった。

「だが、事実を話した以上私たち地上人はここにはいれないんだ」
おじいさんは寂しげに語り出した。
「ここについた時に吉里吉里人の掟というのを読んでね。そこには地上人には知られてはいけない、と書いてあった」

「でもどう戻るの?」
若者たちは急に自分たちのせいで出ていっちゃう人間がいることを知った。
「戻り方は簡単さ。この山には地上の海と繋がってる穴があるんだ。そこに入り込めば簡単に地上に戻れるんだ。まぁ、浦島太郎状態だがね」と笑いながら話した。

「ここにいることはできないの?」
「地上人と吉里吉里人が触れ合うことは禁止されている。君たちにどんな災いが起こるかわからない。私たちはこの景色を見て説明するということも果たしたしな。いなくなるよ」
若者たちは自分たちがこれから、吉里吉里村を守っていく強い誓いを誓ったのだった。

そして地上人たちはその夜に森の中に入っていった。
おじいさんは「君たち、この村を守って地上人に狙われないよう、気をつけて。元気に生きてくれ」と今日会った人だったが、涙ぐみながら、別れを言った。

吉里吉里人は自分たちがずっと抱いていた謎を今日原宿に行くと決めたことがキッカケで全て紐解けた、大切な日になったのだ。
地上人が助けてくれたおかげだった。

――

それから 80年後・・・・・・
吉里吉里人たちはそれぞれ家族を持った。
吉里吉里人は昔地上人に雨を降らせたり雷を落としたり嫌がらせをしていた歴史があったようで、地上人からは恐れられていた存在であった。
だが、この吉里吉里人は地上人に育てられた為、この時代から地上人は助けてくれた人と言い伝わり空から吉里吉里人がいじわるをする習慣はなくなったのだった。

(編集部より)本当はこんな物語です!

 ある6月の早朝、上野発青森行の列車が突然、止まります。とまどう乗客の前に現れた男たちは、「あんた旅券(りょげん)ば持って居(え)だが」と詰め寄ります。実はこのとき、東北の一寒村でしかなかった「吉里吉里国」が突如、日本からの独立を宣言していたのです。

 旅券不所持で連行された乗客の一人、三文作家・古橋の視点で物語は進みます。東京・原宿に憧れるカレンさん版の若者たちと異なり、天然の要害ともいえる盆地に広がる吉里吉里国の人々は老若男女問わず、日本への不満を言い立てます。加えて、行政、金融、農業、医学に言語と、独立国と認められるべく周到な準備がなされていたことが次第にわかってきます。当然、日本国も黙っていません。独立阻止に向け、様々な策を講じます。そのわずか1日半の攻防が文庫本3冊の長大な物語でつづられます。

 約40年前に発表された物語ですが、令和の時代に読んでも当時日本が抱えていた問題の多くが解決されていないことに驚かされます。浦島太郎のように「まるで変わってしまった」と思えれば、よかったのですが……。