バラバラに散らばったコスメを整頓するようなイメージ
――福本さんは、オーガニックコスメのフリーランスPRとして活動しつつ、コラムニストとしても活躍されています。初の著書『今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by 敦子スメ』はどんな経緯で書くことになったんですか?
私の中には少し前から、自分のオーガニックコスメに関する知識を一冊の本にまとめたいという気持ちがあったんです。雑誌のコラムに加えて、InstagramやYouTubeでもいろんなアイテムを紹介させてもらっていて、それはそれで全部楽しいんだけど、ちょっとばらけてる印象もあって。部屋でバラバラに散らばったコスメをひとつの棚に整頓するようなイメージと言いますか。
最初はどうやって本を作ればいいかわかりませんでした。だからまず簡単な企画書みたいなものを作って、そこからはとりあえず「本を作りたい時って、誰に聞けばいいの?」と口に出していました。ある日「雑談していて楽しい」と思う編集者さんに、カジュアルに聞いてみました。そしたら話を固めてきてくれて、本の制作がスタートしたんです。
――本書のキーワードである「#敦子スメ」はどうやって始まったんですか?
好きなものやいいものを伝えていくうちに「これに名前をつけたい」という思いが芽生えました。でもすっごい軽いノリでした。「敦子スメ」ってワードも正直思いつき(笑)。だから当初は「敦子スメ」が話題になるなんて、まったく想像してませんでした。
私がオーガニックコスメを知ったのは20歳の時。ニューヨークに旅行で行った時、偶然入った「WHOLE BODY」というお店で「なんかよくわからないけどいい感じ」と思ったんです。当時はまだオーガニックコスメが日本でほとんど紹介されてない時期だったので、360°オーガニックコスメに囲まれるというのは初めての経験でした。そして私は直感的に「いま大切なことが起こっている」と思ったんです。それでたくさん買い物をして帰国したら、日本にオーガニックコスメが増えるタイミングと重なり、社員に誘われました。そこから私はどんどんオーガニックコスメにハマっていきました。
美容は人生そのものを良くするもの
――『今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by 敦子スメ』というタイトルは本当に素晴らしいですね。
最初は「Best Of 敦子スメ」みたいなタイトルが良いかなって思ってたんです。でも作っていると私自身いろいろやりたいことが増えてきて。そんな中で担当編集の岩谷(大)さんが私が書いた簡単な企画書にあった「『今より全部良くなりたい』がタイトルにいいんじゃないですか?」と言ってくれたんです。
――この本はいわゆるメークや美容にまつわるオーガニックコスメの話だけでなく、ホロスコープのような星占い、ヨガ、さらにはインドやスリランカの伝承医学「アーユルヴェーダ」なども紹介しているのはなぜですか?
それは私が美容は健康の上に成り立っていて、その先に運の良さも関連すると考えているから。美容のことを語るなら、健康ももちろん必要。美容とは単に「見た目が良くなる」「コンプレックスが消える」というわかりやすいことだけではなくて、生活を豊かにしてくれたり、自分の内面との調和が取れて人生そのものを豊かにするものだと考えています。もちろん老若男女なんて関係なく。
――薀蓄好きの男性目線でいくと、星占いや月の満ち欠けの話も面白かったです。
私は昔から掘れば何か出てくるものが好きなんですよ。オーガニックコスメも星占いもアーユルヴェーダもものすごく奥深い。そういうのを追求するのがロマンがあって楽しいんですよね。ちょっと調べてすぐ全部わかっちゃうものはつまらないかも。
――「自然の力を借りて、美しく、楽しい人生を生きる」という本書のテーマが最も顕著に書かれていたのは、生理に関するコラムだと思いました。そこには、毎月ひどい生理痛に苦しんでいた福本さんが、20代の時、改めて生理の仕組みや女性ホルモンについて学び、トライ&エラーを繰り返しながら30代でようやく自分にとって心地いい状態を見つけたということが書かれていました。しかもそれが結果的に美容にもつながっていく。「少しずつでも自分の身体を上手に扱えるようになる」という言葉はまさに本書の核心に触れると感じたし、生理がない男性の僕でも共感することができました。
私はこの本で自分の思いを押し付けるのではなく、その人のためになる一冊になってほしいと思いました。性差も年齢も関係なく、「今より全部良くなりたい」と思っている人に向けて、自分が持っているものをすべて出したと思います。
コスメに対する熱が塊になってて圧を感じる(笑)
――アイテム紹介文を含む、本書のすべてのテキストを福本さんが書いたんだとか。
はい。最初は「きっと美容ライターさんが入るんだろうな」と思ってたんですけど、いつのまにかアイテムの紹介文もすべて私が書く流れになってました(笑)。それに、私も本を作るのが初めてだから、自分の作業量とか考えずに引き受けちゃったんです。
――でもこのテキストも本書の大きな特徴だと思います。アイテム紹介文はいわゆるカタログに載ってるようなお決まり文言ではなく、「洗う幸せのおまじない」シャンプーや、「じゅうたんオイル」なるフェイスオイルなど、福本さんが実際に使って感じた生の言葉がすごい熱量で書かれている。そのせいか、僕はこの文章を読んで「コスメキッチン時代の福本さんはこんな感じで接客していたのかな」と思いました。
あ、それはあるかも。この本に載ってるアイテムはすべて本当に思い入れのあるものだから、テキストにも自然と熱が籠もっちゃったんですよね。紹介してるコスメは250個あって、多いものだと500文字くらい書いています。私のコスメに対する熱が塊になってて、改めて読み返すと私自身ですらちょっと圧を感じますね(笑)。
「お前は変わってるわけじゃない。ただ数が少ないだけだ」
――本を読んでいて、福本さんはすごくポジティヴでエネルギーのある女性だと思いましたが、それは子供の頃からですか?
そうですね。子供の頃からこんな感じでしたね。とはいえ、私自身悩みがなかったわけではないんですよ。これは本にも書いたけど、昔からいろんな人から本当に「変わってる」と言われ続けてきました。言われるたびにちょっと寂しい気持ちになりました。言われすぎて、20歳くらい頃、かなり悩みました。それを当時のボーイフレンドに相談したんです。そしたら、その人は「別に変わってるわけじゃねぇんだよ」ってこういう口調で話し出して、「ただお前みたいな人間の数が少ないだけだ!」って(笑)。そこでハッ!となりました。
――Instagramのライブやポッドキャスト「1mile TALK #敦子スメ with D」にも登場し、「敦子スメ」のファンには「ミスターD」の愛称でおなじみ、担当編集の岩谷さんは本書の制作においてどんな存在でしたか?
この本は私と岩谷さんの二人で作ったという面は確実にあります。彼はポジティブで、器が大きい人だと思います。岩谷さんにInstagramやポッドキャストに出てもらって、(オーガニックコスメの)裏側を知ってもらうことで、それも楽しみのひとつにしてもらえたら、という想いもありました。岩谷さんは個人的に「敦子スメ」を購入して、インスタやポッドキャストで紹介してくれたりもした。そうやってオーガニックコスメを自分のものにしていく過程をみなさんにも見てもらいたかったんです。
――最後に『今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by 敦子スメ』はどんな人に読んでもらいたいですか?
そりゃもちろん“今より全部良くなりたい”すべての人に読んでほしいです(笑)。私はただ自分が使っていいと思ったものや知識を紹介してるだけにすぎません。でも、見てくれた方が、自分のやり方で自分のものにしていってくれています。それが私も嬉しいです。
――実は僕が福本さんの存在を知ったのは、モデルの大屋夏南さんとのYouTube動画でした。僕は昔から足の裏が熱くて眠れないことが多かったんです。そしたら、妻が「#敦子スメロイヤル」で紹介されてるARGITALのグリーンクレイペーストで足裏パックしてる動画を教えてくれました。ものは試しと思って実際やってみたら、足裏の熱が取れてものすごくよく眠れたんですよ。その流れが今回の取材につながりました。
その報告例は初めて聞きました(笑)。でもそういうこと。大事なのはグリーンクレイペーストの足裏パックで効果を体感したことだけではなくて、そこからその人の世界が広がったという部分です。足裏パックから奥さんとの会話が広がり、美容にも興味が出た。さらにこの本の取材をキッカケに「少しずつでも自分の身体を上手に扱えるようになる」ということにも気づいてくれた。つまり「前より良くなってる」とも言えるのではないかなと思います。
これが「美容は健康の上に成り立っていて、その先に運の良さも関連する」ということ。その実感を自分のものにしていってくれたら嬉しいです。この本をきっかけに「今より全部良くなる」を実践してくれたら嬉しいです。