日本文学者で翻訳家のジャニーン・バイチマンさん(77)が英訳した、大岡信(1931~2017)の詩選集「Beneath the Sleepless Tossing of the Planets」が、今年度の日米友好基金日本文学翻訳賞に決まった。1979年に米政府が創設し、現在はコロンビア大学が運営する賞で、過去2年間に出版された日本文学の英訳作品から選ばれた。
バイチマンさんは1942年、ニューヨーク生まれ。コロンビア大学でドナルド・キーンに師事し、正岡子規や与謝野晶子の評伝を発表してきた。大東文化大学名誉教授。大岡とは40年近く親交があり、『折々のうた』の英訳もある。
受賞作は95年に出版した本の改訂版。書名は、バイチマンさんが初めて読んだ大岡の詩集「遊星の寝返りの下で」から取ったという。今回は日本語の詩を併録、訳者の言葉を書き下ろした。改めて出す意味を書きなさいと助言したのはキーンだった。「大岡さんは亡くなっても、新作の詩はなくても、新しい形でまだ生きているという思いがありました」。生前の大岡とはファクスでやりとりし、英訳はすべて目を通してもらっていたという。英語でもわかりやすい詩を選び、大岡が英語版向けにタイトルを変えることもあった。
「翻訳は移植のようなもの。優しく大切に植え替えると、新しい場所からまた芽が出て伸びる。正確さはもちろん、その上でほかの言語でも伸びてゆくかどうかが重要です」(中村真理子)=朝日新聞2020年1月15日掲載
編集部一押し!
- 旅する文学 群馬編 空っ風の下、人々のタフな営み 文芸評論家・斎藤美奈子 斎藤美奈子
-
- 杉江松恋「日出る処のニューヒット」 君嶋彼方「春のほとりで」 10代の日々を活写、青春小説作家の代表作が生まれた(第17回) 杉江松恋
-
- コラム 読んでぐっすり 眠りにつく前に読みたい絵本・童話集4選 好書好日編集部
- 中江有里の「開け!本の扉。ときどき野球も」 自力優勝が消えても、私は星を追い続ける。アウレーリウス「自省録」のように 中江有里の「開け!野球の扉」 #17 中江有里
- BLことはじめ 「三ツ矢先生の計画的な餌付け。」 原作とドラマを萌え語り! 美味しい料理が心をつなぐ年の差BL 井上將利
- 谷原書店 【谷原店長のオススメ】梶よう子「広重ぶるう」 職人として絵に向かうひたむきさを思う 谷原章介
- トピック 【直筆サイン入り】待望のシリーズ第2巻「誰が勇者を殺したか 預言の章」好書好日メルマガ読者5名様にプレゼント PR by KADOKAWA
- 結城真一郎さん「難問の多い料理店」インタビュー ゴーストレストランで探偵業、「ひょっとしたら本当にあるかも」 PR by 集英社
- インタビュー 読みきかせで注意すべき著作権のポイントは? 絵本作家の上野与志さんインタビュー PR by 文字・活字文化推進機構
- インタビュー 崖っぷちボクサーの「狂気の挑戦」を切り取った9カ月 「一八〇秒の熱量」山本草介さん×米澤重隆さん対談 PR by 双葉社
- インタビュー 物語の主人公になりにくい仕事こそ描きたい 寺地はるなさん「こまどりたちが歌うなら」インタビュー PR by 集英社
- インタビュー 井上荒野さん「照子と瑠衣」インタビュー 世代を超えた痛快シスターフッドは、読む「生きる希望」 PR by 祥伝社