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「岩石薄片図鑑」 まるでポロックの絵!? 薄くすることで見えてくる美しい世界

青木正博「岩石薄片図鑑」(誠文堂新光社)より

 石や岩というと、黒や灰色といった地味な印象を抱きがちではないでしょうか。ところが、そんな先入観をガラリと変えてくれるのが、今回取り上げる「岩石薄片図鑑」です。

 本書は、光を通すほどに薄く研磨した岩石の薄片を精緻な写真で紹介する図鑑。薄片はおよそ30マイクロメートルという薄さで、コピー用紙の3分の1ほどだそうです。薬を包むパラフィン紙くらいのイメージでしょうか。岩石をそれほど薄くできる技術もさることながら、偏光顕微鏡を通して見える姿が肉眼で見る岩石とは全く違うことに驚かされます。万華鏡のように美しい姿の正体は、主に鉱物の粒子の集合体。どんな鉱物が含まれているのかなど、薄片を観察することで、岩石の性質や成り立ちを探ることができるといいます。

 たとえ岩石や地学に詳しくなくても、写真集のように楽しめるのがありがたいところです。個人的なお気に入りは、山口県にある喜多平鉱山で採取された「灰鉄輝石(かいてつきせき)スカルン」と呼ばれるもの。その薄片は、肉眼で見る無骨な岩石の姿からは想像できないほどカラフルで、まるでジャクソン・ポロックの抽象画のようにも見えます。この放射状に伸びている細長い柱のような形は、灰鉄輝石の結晶によく見られる特徴なんだそう。

青木正博「岩石薄片図鑑」(誠文堂新光社)より

 岩石の中に広がる彩り豊かな世界。これから石や岩を見かける度に、その奥深くにはどんな景色が広がっているのか、想像するのが楽しくなりそうです。