東京国立博物館の特別展「はにわ」(12月8日まで)に、東京国立近代美術館の企画展「ハニワと土偶の近代」(12月22日まで)と、はにわに熱〜い視線が注がれているこの秋。『楽しく学べるはにわ図鑑』(朝日新聞出版)で、はにわを思いっきり愛でてみませんか?
巻頭では、はにわが生まれた古墳時代のことや作られた目的など基礎知識をしっかり解説。展覧会の予習にもピッタリです。
本編は「人物のはにわ」「動物のはにわ」「モノのはにわ」の全3章構成で、国宝や重要文化財を含むはにわ150体を形ごとに紹介しています。トップバッターは、はにわ界のスーパースター・国宝「埴輪 挂甲の武人」。トーハクの特別展「はにわ」に集結した、兄弟のようによく似た4体ももちろん登場します。はにわの魅力はなんといっても、その豊かな表情。パッと見ではよく似た姿形の彼らもじっくり見てみると、どこか覚悟を決めたようなキリッとしたまなざしだったり、おっとりしてそうに見えて刀からは手を離さずに勇ましかったりと、どれも個性的です。
はにわの中には顔だけしか発見されていないものも多いそうで、群馬県藤岡市で出土された「笑う埴輪」もその一つ。シンプルながらも絶妙にいい笑顔に、見ているこちらも思わず笑顔になってしまいます。笑顔には魔除けの効果があるとされていたのだとか。古墳を守る役割の盾持人(たてもちびと)埴輪に笑顔の表情のものがあるのも、そうした理由からだそうです。確かに邪悪な気持ちにはなりません。効果抜群です。
オールカラーのポップな誌面で、ただ眺めているだけでも楽しい一冊ですが、様々なはにわの紹介の合間には、はにわに見る古墳時代のファッション、はにわと土偶の違いなど、はにわについてもっと知りたい人に向けた深掘り知識も充実しています。
巻末では、はにわの“実家”ともいえる古墳についての情報もしっかりとおさえています。古墳の種類や中に納められているものなどの基礎知識はもちろん、一度は訪れてみたいすごい古墳も紹介していて、「こんな古墳があるの!?」と驚いてしまうこと間違いなしです。さらにうれしいことに、はにわに出会えるミュージアムガイドも収録されています。本書で見つけた“推しはにわ”にぜひ直接会いに行ってみてください!