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阿部泰尚さん「いじめを本気でなくすには」インタビュー 法と証拠突きつけ解決へ

阿部泰尚さん(本人提供)

 学校に訴えても動いてくれない。いじめに傷つき悩む子や親のために調査し、解決に導く駆け込み寺のような存在だ。探偵として最初に依頼を受けた2004年以降、全国から寄せられた相談は6千件を超える。「次から次へと相談が来て、『この子が笑えるようになるまで』というのがずーっと続いています」

 今でこそ学校に恐れられる「いじめ探偵」だが、かつては怪しまれ、「先生に塩をまかれたり、警察に手錠をかけられたりもしました」と苦笑い。音声・画像・書面など揺るがぬ証拠を集め、実績を上げてきた。5年前にはNPO法人「ユース・ガーディアン」を立ち上げ、無償で調査する態勢を整えた。

 最近はSNSがいじめの温床になる。生徒らへの誹謗(ひぼう)中傷をツイッターで繰り返す犯人にでっち上げられたり、TikTokで変顔をさらされたうえ拡散されたり――。「犯行を見かけたらスクリーンショットを」と相談者に助言する。

 解決のポイントは、13年施行の「いじめ防止対策推進法」を生かすことだ。いじめを「(被害者が)心身の苦痛を感じているもの」と定義している同法や、文部科学省が定めた調査のガイドラインをまとめた資料をiPadに入れて学校側に示し、「子ども同士のいざこざ」などという言い逃れを許さない。加害者の親とは話し合いが難しいケースが多く、「証拠を見せ、いきなりリーチをかける構えで臨みます」。

 一方で、各地で教員の忙しさを目の当たりにしてきた。担任が責任を負い、ほかの教員は干渉しないという風土も重なり、いじめの深刻化につながっている、と考える。

 小中高校のいじめの認知件数は全国で年間54万件超(18年度)。「自分が介入せずに済むような社会に」という願いは、いつかなうのか。(文・吉川一樹 写真は本人提供)=朝日新聞2020年6月13日掲載