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「インカレポエトリ」大学超えて詩の活動 伊藤比呂美さんらの授業きっかけ、詩集刊行も

1月に行った伊藤比呂美さんの授業。自分の詩を歌に乗せて朗読する学生がいた=早稲田大

 「インカレポエトリ」という団体が昨年、発足した。これまで詩に関わりのなかった学生らが大学を超えてつながり、詩の創作や朗読を行っている。7月、そこから生まれた詩人たちの詩集の刊行が始まった。

 団体が発足したのは2019年夏。詩人の伊藤比呂美さんと朝吹亮二さんが詩賞の贈呈式で会った際、伊藤さんは早稲田大学で詩の演習講座を行い、朝吹さんも慶応大学で前年まで詩の授業を受け持っていたことから盛り上がった。初めは両校だけでの活動を考えていたが、大学で教職に就く詩人たちにも呼びかけた結果、6校から90人近くの学生が加わった。

 これまでに、参加した学生たちによるアンソロジーを2冊刊行。第3号も今秋に控える。出版社の七月堂(東京)との間では、更なる計画も進む。選抜したメンバーの叢書(そうしょ)を7月から、順次出版している。同社代表の知念明子さんによれば、1冊につき300部ほどを見込み、現時点では10~15人分の詩集が出される予定だ。「今まで読んできた詩壇の作品とはまた違う、詩として生まれたての言葉の新鮮さを感じる。人生最初の一冊がその人にどんな影響を与えるのか、想像すると楽しみ」

 3月に早稲田大を卒業した小島日和さんは、第1弾として詩集『水際』を出した。「完成した詩集を初めて手に取った時の喜びは、これまでに味わったことのないものでした」と振り返る。

 《歩道橋の上から/こちらを見下ろしている動物の/群れの中にわたしがいるような気がする/言葉は聞こえないが 立てた耳の裏側が/ひどく騒がしい》(同書所収「長雨」から)

 伊藤さんは「詩の雑誌の投稿欄だけでは、外に出て行く機会が少ない。詩集を刊行することで、若い才能をちゃんと世に送り出していきたい」。朝吹さんは「この中から、必ずや力のある詩人たちが育っていくと信じている」と力を込める。(山本悠理)=朝日新聞2020年7月29日掲載