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「ランキング」書評 数値評価との共存 自己管理を

評者: 坂井豊貴 / 朝⽇新聞掲載:2021年02月06日
ランキング 私たちはなぜ順位が気になるのか? 著者:ペーテル・エールディ 出版社:日本評論社 ジャンル:社会学

ISBN: 9784535559813
発売⽇: 2020/12/22
サイズ: 20cm/271,27p

ランキングは、デジタル社会の必然的な帰結である−。日常にあふれるランキングルールに潜む恣意性を明らかにし、現代のランキング社会とうまく付き合うためのヒントを提供する。【「…

ランキング 私たちはなぜ順位が気になるのか? [著]ペーテル・エールディ

 2000年のアメリカ大統領選で、民主党のゴアは敗北した。泡沫(ほうまつ)候補のネーダーに、僅(わず)かだが票を喰(く)われ、それが致命傷となった。勝ったのは共和党のブッシュ。ネーダーの有無が、選挙の一位と二位のランキングを変えた可能性は高い。
 小さな要素がランキング結果に大きく影響することは、他にも散見される。それは評価される側の、行動の変容を起こす。例えばある有力な米国大学ランキングは、履修者が19人以下の授業に高いポイントを付ける。すると大学はポイントを得るため履修者を19人以下にする授業を作る。20人だと学習効果が下がるエビデンスがなくともだ。
 とはいえ、人間はランキングを気にするが、ランキングと幸福が一致するとは限らない。オリンピックの銀メダリストは、金をとれなかったと嘆くが、銅メダリストは、メダルをとれたと喜ぶ。比べる相手によって幸福感は変わるのだ。他人と比べないことは難しい。だからある社会心理学者は、満足したいなら、自分に有利な相手と比較せよという。また、自分を追い込みたいなら、自分に不利な相手と比較せよという。
 インターネットの普及により、ランキングが活躍する場は急増した。オンライン店舗では、よく商品に点数が付いており、これもその一種だ。点数は商品の個性や、各人との相性を表すわけではない。一つの大まかな評価に過ぎずとも、人は点数を気にかける。点数が付くのは商品だけではない。店舗にも付くし、顧客にも信用スコアが付く。馬鹿馬鹿しい面はあれども、やはりそれはそれなりに便利なものではあるのだ。
 おそらく我われはこれから更に、様々な数値による評判と共存していくのだろう。だから著者は「評判なんてぜんぜん気にしない」という態度はあらためた方がよいと説く。好もうと好むまいと、評判とは自己管理の対象なのだ。そのような時代と、その時代を支える人間とを本書はえがく。
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Péter Érdi 米カラマズー大複雑系研究センター教授など(計算論的神経科学、計算社会科学)。