コロナ禍はまちの本屋を見直す機会になった――。昨年5~11月に書店店頭の売り上げが前年比を上回り、とりわけ住宅街や商店街の書店が好調であることが、出版取次大手トーハンのまとめでわかった。巣ごもり需要が背景にありそうだ。
トーハンが全国の約1500書店について、2019年11月~20年11月の売り上げデータを調べた。
新型コロナウイルスが感染拡大した2月以降、住宅街や郊外、商店街の書店では前年に比べて売り上げが増加傾向にある。特に、緊急事態宣言下にあった4~5月は10~30%ほど売り上げが伸びたという。一方で、ビジネス街や駅周辺では売り上げが落ちた。
テレワークが広がったり、不要不急の外出を控えたりしたことで、生活圏で本を買う人が増えたことが要因と考えられる。ただし、次第に立地によるギャップは縮小する傾向にあるという。
住宅街に続く商店街にある東京都足立区のスーパーブックス竹ノ塚駅前店では、営業時間を短縮しているものの、10~15%売り上げが増加したという。西本修二店長によると、一斉休校によって需要が増えた学習参考書のほか、投資や自己啓発などのビジネス書、片付けの本などが売れている。客の流れも、これまで多かった夕方以降の客が減り、午前中に客が集まる傾向にある。
売り上げが増えているとはいえ、感染対策に気をつけながらの営業には難しさもある。西本さんは「接客や本のことに集中できない。巣ごもり需要がいつまで続くのか、不安もある」と話す。
出版科学研究所によると、20年の紙の出版物の推定販売金額は、前年比1・0%減の1兆2237億円。17年に6・9%、19年にも4・3%と大幅な減少が続いてきたが、20年は小幅にとどまり健闘した形だ。(滝沢文那)=朝日新聞2021年2月17日掲載