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オームラトモコさんの絵本「なんの じゅうたい?」 渋滞のイライラをドキドキ、ワクワクに

『なんの じゅうたい?』(ポプラ社)より

乗り物図鑑の要素も

――車に乗っていると時々遭遇する渋滞。原因がわからず、先も見えないのでイライラする人も多いのでは? オームラトモコさんの絵本『なんの じゅうたい?』(ポプラ社)は、そんなイライラがドキドキ、ワクワクに変わる作品だ。動物、虫、魚など、さまざまなものが並ぶ、人気の「ぎょうれつ」シリーズ3作目。渋滞の先に何があるのか、次はどんな車が出てくるのか、ページをめくる楽しさがある。

 1作目は、動物が並ぶ『なんの ぎょうれつ?』です。個展で「動物たちが行列に並んでいる」という内容の絵本作品を展示していたのを編集者の方が見てくださって、声をかけていただきました。絵を中心に描いたものだったのでセリフが少なく、そこからだんだん膨らませていきました。

 2作目は、古今東西の妖怪が並ぶ『こんやは なんの ぎょうれつ?』。動物は子どもたちも大好きなのでよかったのですが、妖怪は若干マニアックで好みが別れたみたい(笑)。3作目はもうちょっと一般的なものにしようと話していたところ、たまたま個展で、いろんな乗り物が並んでいるロングサイズの絵を展示していて。行列ではなく渋滞でしたが、シリーズにも合っているということで『なんの じゅうたい?』ができました。

『なんの じゅうたい?』(ポプラ社)より

――渋滞しているのは、自転車、ベビーカー、車椅子、乗用車、トラック、バスなど、大小さまざま50種類の乗り物と運転手たち。

 車種は、図鑑を見たりインターネットで調べたりしながら選びました。できるだけ馴染みのある車種にしていますが、何台かは種類を覚えてもらうきっかけになるといいなと思うものにしています。並ぶ順番は、だいたい小さいものから大きいものになっていますが、大きさが同じようなものは働く車などジャンル分けしました。あとは、見開きごとに何かしらのストーリー性をもたせたかったので、乗り物の特性を活かした展開や登場人物の会話なども含めて並べています。最後にリストを載せて、図鑑的な要素も入れました。

 車の絵はそれまであまり描く機会がなくて、いざ描こうと思って見ると、車体の下の部分がけっこう複雑で、車によっても全然違うことに気づきました。リアルに描こうとすると細密画みたいになってしまうので、嘘っぽくならないように省略したり、デフォルメしすぎないようにしたり、加減が難しかったです。普段、そこまで車を見ることがなかったので勉強になったし、楽しかったですね。このシリーズを作っているときは、毎回その題材に詳しくなります。

『なんの じゅうたい?』(ポプラ社)より

渋滞の原因は・・・?

――物語は渋滞の最後尾から始まり、渋滞の原因を探りながら読み進めていく。

 作品を作るときは、結末から考えることが多いですね。そこから遡っていって、全体のストーリーを考えていきます。『なんの じゅうたい?』は渋滞の原因になるものなので、何にしようかと。車は地面に並んでいるので、地面の下に何かある、というところから発想しました。

 絵は、手で線を描いて、パソコンで色付けしています。私自身もそうでしたが、子どもはかなり細かいところまで見ているので、細部まで手を抜かないようにしています。絵本の最後に出てきた車や人が全部登場するところも、最初と違っていると絶対に見抜かれるので、そこは頑張って。すごく小さいものは印刷すると潰れちゃう部分もありますが、パソコンだとクローズアップできるので、細かいところまで描き込んでいます。

『なんの じゅうたい?』(ポプラ社)より

――『なんの ぎょうれつ?』は、ページをつなげていくと蒔絵のように1枚の絵になっているのも特徴だ。

 イラストの仕事から始まっていることもありますが、文章を書くのに苦手意識があって、物語で読ませるのではなく、絵で見せる作品が多いですね。理由はわからないんですけど、つながっているものに惹かれるみたいで、絵がつながっている作品が多いです。小学生の頃からそういう絵を描いていたような気がします。イラストレーターになる前は、テキスタイルを学んでいましたが、それもテキスタイルの連続模様に惹かれていたのかもしれません。

 「ぎょうれつ」シリーズは描いていても楽しいですね。行列は見るのも好きです。「あ、並んでる、何だろう?」って。でも、並ぶのは苦手なので並ばないんですけど(笑)。