人々の命や暮らしを奪う大災害に対して、私たちはどう向き合うべきなのか。東日本大震災から10年となる今年、災害や被災後の暮らしなどをテーマとした展覧会が東北地方を中心に、各地で開かれている。
東日本大震災にともなう津波は甚大な被害をもたらした。福島県立博物館(同県会津若松市)の企画展「震災遺産を考える――次の10年へつなぐために」(21日まで)は36人が亡くなった同県南相馬市の介護老人保健施設からはがしてきた津波痕跡を示す壁紙など、大震災の直後や、その後の人々の動きがうかがえる直接的な資料約170件から、10年を振り返る。
より歴史的な視点から、洪水・火事・疫病・飢饉(ききん)などといった災害全般をとらえ直そうとしているのが、仙台市歴史民俗資料館の特別展「仙台の災害~天災は忘れたころに~」(4月11日まで)だ。約100年前のスペイン風邪流行時のポスターは、現代と同じようにマスク着用を呼びかける。史料からは19世紀の東北地方が、冷害による飢饉に繰り返し苦しめられていた様子がうかがえる。
このほか、もりおか歴史文化館(盛岡市)の「災害の記憶 盛岡藩の被災・救済・防災」(15日で終了)や、仙台市博物館の「特集震災10年―災害を生きた人々」(21日まで、臨時休館中)も同様の視点で地域史を丹念に掘り起こす。
一方、国立民族学博物館(大阪府吹田市)の特別展「復興を支える地域の文化」(5月18日まで)は、被災した東北の市町村で行われていた様々な郷土芸能が避難先で演じられることで、地域のコミュニティーを再結成させる力を発揮したことを訴え、被災地の地域文化などを紹介する。
これら以外では、大震災を後世に伝えるため、「天地ひっくりげぇるぐれぇの揺れでな、ほのあとはぁ、海、こっちゃおっしょせて来で」などと地元の言葉で刻まれた「おらほの碑」を手がかりに、地域の10年を振り返る南相馬市博物館の企画展「南相馬の震災10年」(5月5日まで)や、10年前に初めて出産した仙台在住の女性の育児日記をもとに彼女の時間をたどる、せんだい3・11メモリアル交流館の企画展「わたしは思い出す」(6月13日まで)のように、立ち位置の再確認を試みる企画も。
東北大学名誉教授の平川新さん(近世史)は「10年という節目を契機に、展覧会を通して、災害の歴史や地域の現状を考えてみるのは大切なこと。今後、20年、30年とたっても続けていくべきことではないか」と話している。(編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2021年3月17日掲載