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私もぶたまんになりタイ 長野ヒデ子

 息子の連れ合いは中国の四川省の、山の中から鎌倉に嫁いできた。

 『秀方(シューファン)さんのチャイニーズキッチン』の本も出してもいる料理上手。自給自足の村で生まれたので、豆腐、ソーセージ、ベーコンと、なんでも自分で作る。辣(ラー)油も、もちろん手作り。

 一度食べると「秀ちゃんの辣油が食べたい、手作りは違う~」と大評判。

 勿論(もちろん)、「餃子(ギョーザ)」も「ぶたまん」も皮から作る。孫は、それを見て育ったので上手に皮が作れる。保育園で粘土遊びの時、粘土を棒切れでくるくると延ばして遊んでいたらしい。先生がそれを見て「あら面白そう。なに作ってるの?」と聞かれ、「ギョーザのかわ」。「皮?」。棒切れを回す手つきは実にプロ並みで、面白く、たちまち保育園で粘土の「餃子の皮」作りが広がったと聞いた。

 ぶたまんも、具材を大人が作っておけば、どんなに子どもが変てこに包んでも蒸せば見事なぶたまんだ。

 関西は「ぶたまん」、関東は「肉まん」と呼び名が違うのはなぜかなあ。

 ある日、孫や子どもたち皆で、秀方が先生でぶたまん作りをした。

 生地粉を大はしゃぎで練る。こね終えると発酵させるために寝かす。その間に絵本の読み聞かせや紙芝居に人形劇をしてワクワクしながら待った。

 発酵し生地が大きく膨らむのが不思議で子どもたちは興奮し、いよいよ麺棒で延ばし、ちぎり、皮つくり。具材を入れて丸めるのは泥団子で腕を鍛えているからうまい。

 「さあセイロに入れて蒸すわよ」の一声で、皆は湯気が立ち上るだけで、もう待ちきれず、鼻を指で上向けて押さえ「♪ぶーたまん」と歌い盛り上がる。変てこに包んでも、蒸すとふっくら。私もぶたまんになりたい。

 そして絵本『とのさまぶたまん』や、給食が楽しみな『とのさま1ねんせい』を創ったのだ。1年生だけでなく絵本は大人も元気出るよ。

 そうこの春、末の孫が1年生になる。昨年はコロナで入学式の後、休校。友達にも会えず、給食もなかったので新1年生は寂しかっただろうなあ。1年生の「口福」はやっぱり給食だよ。「今日の給食、おいしかったよ」と孫から聞くのが私の口福。

 一度、学校に招かれ子どもたちと給食を食べた。ぶたまんが出たのだ。

 次々に、話しかけられるので、私は食べ終らずにいると、ぶたまんを皆が狙っていた。

 「ねえこれ残す?」「嫌いなの?」「欲しいなあ」というので「いいよ」と言ったとたん「わー! じゃんけん」「じゃんけん!」と大騒ぎ。

 ああ、子どもたちと一緒に食べることこそ、「口福」だなあと、心から思った。=朝日新聞2021年3月20日掲載