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「ブロックチェーンゲームの始め方・遊び方・稼ぎ方」書評 資産価値得たデジタルの新世界

評者: 坂井豊貴 / 朝⽇新聞掲載:2021年05月01日
ブロックチェーンゲームの始め方・遊び方・稼ぎ方 著者:廃猫 出版社:技術評論社 ジャンル:金融・通貨

ISBN: 9784297119164
発売⽇: 2021/02/15
サイズ: 21cm/223p

「ブロックチェーンゲームの始め方・遊び方・稼ぎ方」 [著]廃猫(@hainekolab)

 電子書籍は古本屋に売れない。購入したものでも発行者の管理下にあり、他者に移転できないからだ。また電子書籍には希少性がない。発行者は費用ゼロでいくらでも複製できるからだ。ゲーム内アイテムも同様だ。ユーザーはゲーム内で購入したアイテムを、ゲーム外に取り出して売れない。また運営者は同じアイテムをいくらでも発行できる。だから通常、デジタル財に資産としての価値はない。
 そうしたこれまでの常識をブロックチェーン技術は塗り替える。所有者は自分のデジタル財を、他者に移転できるようになるのだ。しかも運営者でさえ、一回決めた発行数を変えられない。これはデジタル財をNFT(非代替性トークン)という形態で発行するとできる。NFTは転売ができ希少性が維持されるので、資産としての価値をもつ。ビットコインは個人間で移転でき、また誰も発行数を変えられないから、資産として成立したように。
 各種アイテムがNFTで発行されたゲームが、ブロックチェーンゲームである。例えば「クリプトスペルズ」のレアカード「大天使フリッカ」は世界に9枚しか存在せず、1枚が数十万円で取引される。また、あるゲームのカードを、別のゲームで使えたりもする。
 本書はそうしたブロックチェーンゲームに関する初の本格的な入門書だ。ブロックチェーンゲームは画期的な分、ウォレットの使用など独自の操作に慣れる必要がある。これは初心者へのハードルとなっていた。本書はそのハードルを大幅に下げ、読者を新時代のゲーム、並びにデジタル経済の新世界に導いてくれる。
 この新世界を自分とは無縁と見るのは間違いだ。資産性という、物理的なモノでは当たり前に成立していた概念が、ようやくデジタルの世界でも成立するようになっただけのことだからだ。「当たり前のこと」ができるようになるインパクトは絶大である。
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はいねこ ブロックチェーンゲーム投資家兼プレーヤー。ブログ「しるば!」で攻略情報を発信している。