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高杉真宙さん、漫画の蔵書は1500冊! 13歳からの俳優人生を支えた「僕の一部。」

文:五月女菜穂 写真:家老芳美

中2で上京、一人暮らしを支えた漫画

――高杉さんが漫画が好きになった理由を教えてください。

 もともと、実家に漫画がたくさんあったんですよ。『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)や『ROOKIES』(森田まさのり/集英社)などがあって、それらを読んでいた記憶はあります。それに加えて、幼少期からアニメが大好きで。男3兄弟、実家では1日中ケーブルテレビでアニメを見ているような家庭でした。

 俳優の仕事をきっかけに、中学2年生の時に上京しました。ケーブルテレビが見られなくなった僕が、いちばん最初に感じた寂しさは、アニメがないこと。もちろん家族と会えない寂しさもあるんですけど。調べてみると、どうやら深夜アニメというものがあるらしいと分かって、「けいおん!」(かきふらい)や「ひぐらしのなく頃に」(竜騎士07)にハマって、漫画も読んでみよう、と。それから漫画を読み漁る日々が始まりました。

――まさに「僕の一部。」。高杉さんを支える大切なものだったわけですね。

 そうですね。暇さえあれば、漫画を読んだり、アニメを見たりしていました。僕、趣味で支えられて生きているんですよ。そのうち大切な軸の一つが、漫画です。

 それに、もともと僕、コレクション癖があって、漫画の単行本をそろえるのがすごく好きなんです。背表紙がずらりと本棚に並んでいる姿が好きなんです。それも漫画にハマった一つの理由だと思います。

――漫画雑誌を買って読むより、単行本が出るまで待つタイプですか?

 そうですね。早く読みたいという気持ちもありましたが、中学生・高校生の頃は使えるお金も限られるので、単行本をそろえる方に注力していましたね。

 『NARUTO-ナルト-』(岸本斉史/集英社)も単行本でそろえようとしていたんですが、ある時、電車でお兄さんが「週刊少年ジャンプ」を読んでいるのを見てしまって。重大なネタバレをされた気分で、本当にショックでした(笑)。

蔵書1500冊 1番を選ぶなら…

――ちなみにご自宅にはどれぐらいの漫画をコレクションされているのですか?

 1500冊以上あると思います。家からあふれてしまうので、手放していかなくてはいけないんですけど、悲しいんですよね。中学生から集めてきたものを自ら手放すという行為が。

――1500冊以上も!ご自身の「バイブル」のような漫画はありますか?

 『ボールルームへようこそ』(竹内友/講談社)です。仕事を始めてから、自信がなくなったり、何かに向かっていくことへの恐怖みたいなものがあったりした時に、自分に勇気ややる気を与え続けてくれる漫画です。

 自分には何の才能もない、何かひとつ好きだと言えるものに出会えたら変われると思う主人公の富士田多々良。そんな彼が社交ダンスに出会い、そこで仲間や、ダンスを一緒に踊るパートナーと出会うことで成長していくという物語。スポーツ漫画ではあるんですが、熱いものが伝染する漫画で、泣くシーンではないところでも泣いてしまいそうになります。

 読み始めた頃は同じぐらいの年齢だったのに、今は多々良よりも僕の方がだいぶ年上になってしまって、それはそれで悲しいんですけど、でも、年を重ねてから読むと、また違う発見があって。読み返した漫画の中では、回数がダントツに多い漫画だと思います。

――では、コレクションを仮に処分しなくてはいけなくなった時は、『ボールルームへようこそ』だけは取っておくわけですね?(笑)

 そうですね。でも『ヒモメン〜ヒモ更生プログラム〜』(鴻池剛/KADOKAWA)も『乙嫁がたり』(森薫/KADOKAWA)も『ピアノの森』(一色まこと/講談社)も捨てがたいです……(笑)

縛られない自由な物語がある

――高杉さんは、漫画の何にいちばん魅力を感じますか? 作画ですか? ストーリーですか?

 構成やストーリーだと思います。森薫先生のようにとても細かい絵を見るのも好きなんですけど。

 斬新なストーリーと言えば、例えば『シャドーハウス』(ソウマトウ/集英社)とか面白かったですね。顔のない人物が登場するんです。表情が見えないキャラクターなのに、読んでいると彼らの感情が伝わり、さらにそのキャラクターたちを好きになっていきます。

 何かに縛られることなく、自由な物語が漫画にはあるんですよ。作者の個性やこだわりが詰まっている。ストーリーを考えて、絵を仕上げていくという作業をする漫画家さんは本当にすごい。尊敬してやまないです。

――ストーリーにのめり込む経験というのは、俳優のお仕事にも活かせそうですね。

 どうですかね。僕自身は漫画を純粋に楽しんでいます。漫画原作の舞台などもありますが、「この役をやりたい」と思いながら読むということはないですね。

 今回の本のように、漫画に関わる仕事は嬉しいですけど、漫画を読んでいる時間は仕事のことをなるべく考えないようにしたいと思っています。

自分を発信する第一歩

――今回の『僕の一部。』では、みなさんのお悩みに対して、処方箋のようにそれぞれに漫画を紹介されています。

 はい。「父親に素直になれません。家族の大切さを知ることができる漫画はありますか?」という相談から、「犬とお話ししたいです。現実的には難しいので、喋る犬が出てくる漫画を教えてください」といった相談まで。

 悩んでいる人にはもちろんですが、いろいろな人に少しでも勇気や元気を与えられるように、自分なりに書いていきました。

 それに、僕自身の考えを述べられる場面も少ないので。僕に少しでも興味を持ってくれている人は、この本を読めば僕の人となりが分かると思います。ちょっと恥ずかしいんですけどね(笑)

――え、恥ずかしさもあるんですか。

 もちろん。基本的には、役者は、あまり自分の色を出さない方がいいと思っているタイプなのですが、この連載をやらせていただいて、伝えられる場を持っている人間で、何か伝えたいことがあるなら、伝えていくのもいいかなと思うようになりましたね。

――なるほど。その自分を発信する第一歩が今回の『僕の一部。』というわけですね。

 はい、きっかけになったと思います。

今注目している漫画はコレ!

――悩み相談のようになってしまいますが、漫画は毎月のように新作が発表されて、なかなか何を読んでいいか分からない人も多いと思うんです。高杉さんはそういう人に対してどうアドバイスをくださいますか?

 流行っているものをまず読んでみたらいいと思います。面白いと言われるものには絶対理由があるから。流行っているものから始めて、その中に気に入った漫画があったら、それに似ている作品で有名な作品を見ていく。アニメきっかけで、アニメの原作漫画を読んでみるのもいいですね。そうすると、だんだん広がっていくと思います。

 結局、漫画を知ることも勉強ですから。自分が何が好きなのかを探ることが大切です。僕自身、本の中で紹介した漫画を振り返ると、僕の好みが如実に出ています。僕は仕事漫画やスポーツ漫画などが好きみたいで、もう少し他のジャンルも勉強していかなきゃいけないなと思うことも多いです。

――ありがとうございます。最後に、高杉さんがいま注目されている漫画を教えてください。

 『ダンダダン』(龍幸伸)という漫画が面白いです。「少年ジャンプ+」に連載されている漫画で、シュールなコメディで、まだ始まったばかりなんですけど、面白いですね。これからもっと面白くなりそうなストーリーと絵です。ぜひ注目してみてください。