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「システムを作らせる技術」 ユーザーの「教育コスト」が重要

 デジタル技術を活用した業務変革を目指し、企業は次々とITプロジェクトを立ち上げるが、残念ながら失敗するものも多い。システム作りの当事者には、IT部門や協力会社のエンジニアなどの「作る人」と、経営陣や現場の業務部門などの「作らせる人」の両者がいるが、著者は失敗の原因の多くは「作らせる人」にあるとみる。

 企業が求めるシステムを手にするには、関係者の意識をすり合わせ、実現したいゴールを明確に決め、システムへの要求に優先順位をつけることが不可欠。その際ユーザーがシステムを「使いこなすための教育コスト」を設計段階から意識することが重要だ。ここをおろそかにすると、かつての住基カードのように使われないシステムが出来上がってしまう。

 システムを使って展開したいビジネスは、「作らせる人」でないと描けない。だがそれを「作る人」に適切に伝えるには「作らせる技術」が必要だ。本書ではプロジェクトの立ち上げから実施に至るまでの間の各プロセスで「作らせる人」がすべきことを解説している。陥りやすい失敗の事例も豊富に紹介しているが、自社のプロジェクトが同じ轍(てつ)を踏む前にぜひ読んでおきたい。=朝日新聞2021年9月18日掲載