ISBN: 9784480073433
発売⽇: 2021/09/09
サイズ: 18cm/266p
「SDGsがひらくビジネス新時代」 [著]竹下隆一郎
SDGsは「エスディージーズ」と読む。「持続可能な開発目標」と訳される。そこには2015年に国連で採択された、社会課題の国際目標が並べられている。環境、人権、ジェンダー、貧困など17の項目がある。ここまではいい。国連らしい「きれいごと」のように見える。意義はあっても、実効性はない。経済はきれいごとでは動かない。と、うっかり考えてしまうのは危険である。もはやSDGsは世界的な「ゲームのルール」となっており、ビジネスがそれに反するリスクは高いからだ。
どうしてそんな「きれいごと」が力をもつようになったのか。著者はその一因を、ツイッターをはじめとするSNSの普及に認める。企業がコマーシャル動画で差別的な表現をすると、SNSで非難が拡散する。株価は下がり、ブランド価値は毀損(きそん)する。しかも非難は誰でも、直接の顧客でなくともできるのだ。
また、SDGsと親和性の高い企業は、従業員にとって働きやすく、働く誇りをもちやすい。IT革命後、富の源泉は、物資や工場といった有形資産から、知識や情報といった無形資産へとうつり変わった。そのような産業構造の時代において、SDGsの尊重は、優れた人材を惹(ひ)きつける力をもつ。
投資マネーの動向も、SDGsを促進させている。機関投資家が、投資先を選ぶときに、SDGsに関わる情報を用いることはもはや珍しくない。そうした投資をESG投資といい、日本の年金基金もESG投資を強化している。これはつまり、SDGsに反する企業の資金調達コストは、相対的に高まっているということだ。
企業は社会的責任を果たしましょうという、訓話のような話ではない。いまや企業は衆人環視の公人と似たようなもので、その見識や人格は人とマネーを動かす大きな要因となるのだ。その理路と恐ろしさを本書は「腹落ち」させてくれる。
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たけした・りゅういちろう 1979年生まれ。経済コンテンツサービスを展開するPIVOT執行役員。