モバイル決済代行企業「スクエア社」の共同創業者の一人、ジム・マッケルビーが自らの経験をもとに、模倣困難なイノベーションを構築する方法を理論化した一冊。
スクエア社のサービスは、巨人アマゾンに模倣されながらも、アマゾンを打ち破るという快挙を成し遂げる。それがなぜ達成できたのかを不思議に感じた著者が、自分の経験を考察し、独自の「イノベーションスタック」という枠組みを提示する。
イノベーションスタックとは、文字通りイノベーションの積み重ね（スタック）を意味する。スクエア社の場合、クレジットカード決済を導入できない多くの中小事業者をターゲットに、「単純で」「加盟無料」「安いハードウェアで」「契約不要の」……というように、小さなイノベーションを積み重ねた。その結果、ユニークで、模倣困難性が高いビジネスを創ることにつながったという。
それぞれの要素は模倣可能でも、全体を模倣することは困難で、参入障壁が構築される。小さなチャンスを捉え続ける鋭い観察力と即応という、状況との対話の積み重ねが強靱（きょうじん）なビジネスを生む、明快でエキサイティングな論理を、洒脱（しゃだつ）な筆致で楽しめる。＝朝日新聞2021年10月16日掲載
