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「TAKE NOTES!」 メモを通し思考するための技術、根本的に問う

 優秀なビジネスパーソンには、メモの習慣を仕事に生かしている人が多い。スマートフォンのアプリなど、メモの手段は年々多様化して便利なようで、実は「メモを使いこなす技術」は複雑化しているように感じる。「自分に合うメモ術」を求め続ける迷子は私だけではないはずだ。

 本書で紹介されるのは、30年間で58冊の本と数百本の論文を書いたドイツの社会学者、ニクラス・ルーマンが確立したメモの分類法「ツェッテルカステン」。丁寧な解説が続く展開に、最初はいわゆるハウツー本の印象を抱くが、読み進めるうちに「私たちはなぜメモをするのか?」という根本的な問いの中にいる自分に気づく。

 「記憶するためにメモをとる」のではなく、思考するためにメモをとるのだと、著者は強調する。メモとメモの関係性や文脈を思考し続けることで、新しいアイデアが生まれ、自分の言葉で説明する訓練になり、早く多く執筆できる。

 単に脳のメモリー機能を外部化するためではない。より生産的で高度な成果に結びつけてこそ、わざわざメモをとる意味があるのだ。これだけ精緻(せいち)なメモ術が生まれた源泉は、目的への徹底したこだわりなのだと納得した。=朝日新聞2021年11月6日掲載