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東海林さだおさん、平松洋子さん「東海林さだおアンソロジー 人間は哀れである」インタビュー 本質語り合う盟友が選ぶ

漫画家、東海林さだおさん(左)、作家・エッセイスト、平松洋子さん(右)

 84歳にして現役、週刊誌連載でも創作意欲の衰えを感じさせない東海林さだおさん。長年、漫画とともに読者を魅了してきたエッセーの膨大な作品群から、盟友である作家の平松洋子さんが逸品を選んだ。

 「フロイトが食べる」「官能で『もう一度ニッポン』」「明るい自殺」など、ユーモアにくるんだ批評眼がさえわたる。中でも「よく見つけてきたなあ」と著者本人をうならせたのが、表題に採った一編だ。

 人間は姿形から行為、生理まで、すべて哀れである。なのに自分を偉大とすら思っている。生きていかなければならないのが哀れの根本である――。昔、酒宴で同席者全員の哀れさを説明もなく切々と歌った友人の「発明」的な話も、味わい深い。

 「『東海林さだおの哀れさよォ~』って歌われたら、しみじみ、うつむいちゃうでしょ」

 平松さんが言葉を継ぐ。「シニシズムでもペシミズムでもない、東海林さんの世界観だと思いました。人間みなおんなじだよね、と」。その視点を軸に編んだ、これまでにないアンソロジーになったことを喜ぶ。

 西日が似合う町だというお互いの地元、東京・西荻窪で飲む仲になって十数年。いつも「本質論」談義になるそうだ。作品評価とその自覚。創作と商売。ライバルについて。

 世間話が嫌いな東海林さんの好みもあるが、ちくわ一つにも、幼い日からの「何で何で?」の問い心全開で予定調和なく展開していく、エッセーに通ずる様相らしい。

 「容赦ないですよ」と平松さんが笑えば、「真実を述べるとそうなっちゃう」と東海林さん。「偽善は気持ち悪い、ということだと」「そうそう。うまいこと言うね」

 認め合う2人の作家が分かち合ってきた、とびきり「愉快」な時間の蓄積から生まれた一冊である。 (文・藤生京子 写真・山本友来)=朝日新聞2022年2月19日掲載