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「ハッシュタグだけじゃ始まらない」書評 リアルな体取り戻し社会変える

評者: 藤野裕子 / 朝⽇新聞掲載:2022年05月07日
ハッシュタグだけじゃ始まらない 東アジアのフェミニズム・ムーブメント 著者:熱田 敬子 出版社:大月書店 ジャンル:社会・時事

ISBN: 9784272350575
発売⽇: 2022/03/24
サイズ: 21cm/175p

東アジアに鳴り響くフェミニストたちの変革の声。中国、韓国、台湾、香港の4地域で沸き起こっているフェミニズム運動を紹介する。豊富な写真と当事者の寄稿で伝える、苦闘と創造の記…

「ハッシュタグだけじゃ始まらない」 [編著]熱田敬子、金美珍、梁・永山 聡子、張瑋容、曹曉彤

 「#MeToo」のように、#(ハッシュ)のあとに特定の言葉を付けてSNSに投稿すると、ムーブメントをつくり出せる。多くの人が目にして、関心を向け、自らもタグを付けて発信するようになる。スマホでも簡単にできる、SNS上のデモンストレーション。
 だが、この方法には限界もある。情報が拡散されても、運動の中心部分は広がりにくい。趣旨が誤解されることも多い。制度や社会を変えるには、生身の体による、リアルな空間での、地道なアクションが不可欠だ。だから、本書はあえていう。「ハッシュタグだけじゃ始まらない」と。
 5人の編者は、東アジアの四つの地域で続くフェミニズム運動を紹介する。当局からの厳しい弾圧を受けながらも、草の根の運動が続く中国。「行動派」と呼ばれる20代の女性たちが、血のりで染めたウェディング・ドレスを着て街を歩き、DVに抗議した。
 性暴力に声をあげ、根深い女性蔑視に抗(あらが)う韓国。政策決定に女性が参与し、ジェンダー平等教育や同性婚の法制化を成し遂げた台湾。中国への逃亡犯引き渡し条例反対運動で、女性が最前線で闘った香港。
 いずれもかつて日本が植民地化した国、侵略した地域だ。そこでは、日本がもたらした戸籍・公娼(こうしょう)制度・姦通(かんつう)罪といった制度の克服が目指され、戦時性暴力の被害者の運動が続いてきた。そしていま、日本でジェンダー平等への反動が強まるなか、これらの地域のフェミニズムは、新しい社会のあり方を提示している。
 数々の運動に、読者は圧倒され、同時に、突き動かされるだろう。SNSでは失われる生身の身体を取り戻すように、本書は多くの写真を盛り込んでいる。ページをめくるたびに、運動する人の顔や体に出会う。年齢層も幅広い。「自分には何もできないかもしれない」と思う読者に、動き出すためのエネルギーを本書は届ける。ハッシュタグの一歩先に行くために。
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編著者は、中国・韓国・台湾・香港をフィールドとする研究者、活動家。専門は社会学、フェミニズム研究など。