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柴田ケイコさん新作「パンダのおさじ」シリーズを発表 とぼけた顔のちっちゃなパンダが踊りだす!

写真:内海 裕之

気持ちを盛り上げてくれる相棒のような存在

――『パンどろぼう』『ぽめちゃん』『おいしそうなしろくま』などの人気シリーズを生み続けている柴田ケイコさんの絵本は、個性的な動物の主人公が印象的だ。2023年5月にはじまったシリーズ絵本では、小さなパンダが登場! 第1作目は『パンダのおさじとフライパンダ』。表紙には、菜箸をくわえたパンダのフライパンがドーンと描かれ、その上でポーズを取るコック帽のパンダはインパクト抜群だ。

 今回登場するパンダのおさじくんは、幸せを届ける妖精として描いています。手のひらにのる大きさで、友達になれるようなサイズ感にしようと最初から決めていました。常に敬語でえらそうなところがなくて、いつもそばにいて励ましてくれる優しいパンダです。目はあえて描かず、表情はつけなくとも気持ちやかわいさが伝わるように描きました。

『パンダのおさじとフライパンダ』(ポプラ社)より

――物語は、料理を作るのがしんどくなった料理人のクーさんが、ため息をつくところから始まる。壊れたフライパンを新調しに出かけると、いかにも怪しいおじいさんが、パンダのフライパンをくれるという。とまどいながらももらったフライパンには、小さなパンダが入っていた。どんなお話なのか、早くページをめくりたくなる。

 料理って作るのが嫌なときってありますよね。毎日料理するのはめんどうくさいし、何を作ればいいかわからなくなるときもあって、そんなときにこんなパンダがいたら……と妄想したら、楽しくなったんです。料理をつくったら、一緒に呪文をとなえて踊ってくれる。「アポパイ、ポコパイ、パンパンパン……」。楽しくなるきっかけって、そういうちょっとしたことのような気がします。実は、古典落語に「死神」という演目があって、これに呪文が出てくるんです。こういう頭に残る呪文がキーワードになるといいな、と思ってつくりました。

『パンダのおさじとフライパンダ』(ポプラ社)より

 絵本にダンスを入れたのは、はじめてかもしれません。腰振りを入れたらおもしろいかなとか、子どもでも難しくないような振りを考えてみました。保育園などで、みんなで踊ってくれたらと思っています。

楽しい絵本は心が動くきっかけになる

――4月30日には『パンダのおさじとフライパンダ』の発売を記念して、パンダのおさじのデビューイベントが開催された。

 私の読み聞かせと楽団「ザ・ワースレス」のマリオネットミュージカルを披露しました。おさじくんのマリオネットがかわいいんですよ。「おさじのテーマソング」までつくってくれて、子どもたちも呪文を一発で覚えて踊ってくれたのが嬉しかったです。

子どもたちに読み聞かせをする柴田さん(撮影:内海 裕之)

「ザ・ワースレス」のミニライブにはおさじがゲスト参加し、「なんだなんだパンダ おさじのテーマ」を初披露(撮影:内海 裕之)

【動画】「パンダのおさじ」デビューイベントの様子はこちらから

 絵本の途中でパンダだらけになるシーンがあるんですが、ここが描きたくて絵本をつくりました。小さなパンダたちがいたずらし放題、卵を落としたり、ジュースのプールにしたり、子どもがしそうなことを思いついてたくさん描きました。親が見たらぞっとする光景ですね(笑)。細かい絵なので大変でしたが、描いていてとっても楽しかったです。

――柴田さんは、深いメッセージ性のある絵本というよりも、楽しいお話が描きたいと言う。夢中になれる絵本を読んでいるうちに、何かが心に入ってきて、それをきっかけにできることが増えたというぐらいでちょうどいい。それが絵本のすごいところだと話す。

 絵本を読んだ子どもがこうなってほしいと意図して描くことはあまりないのですが、たとえば食材の中に入って遊ぶ「しろくま」シリーズを読んでから、「いろんな食材を食べられるようになりました」というようなご感想をいただくことは多いですね。「パンダのおさじ」も踊っているうちに、ちょっとした工夫で嫌なことも楽しくなるのかも、と感じてくれたり、パンダのおさじがそこにいて励ましてくれそう、と頑張るきっかけになったりしたら嬉しいなと思っています。でもとにかく楽しんでくれたらいいな。絵本の中に隠れ「おさじの顔」を描いているので、ぜひ探してみてください!