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「ピクルスとともだち」ほか子どもにオススメの3冊  成長する心の動き、キラキラ

「ピクルスとともだち」

 子どもたちの身近な日常が、小学生のこぶたのピクルスを通して丁寧に描かれた幼年童話の第3弾。

 雨雲を吹き飛ばしてほしくてどうしても“春の大風”がいつ吹くのか知りたいピクルス。いろいろな人に話を聞きにでかけた折、森に行く途中の古い家にこぶたのジンブが引っ越してきたことを聞くのです。

 訪れた春とともに、ジンブと仲を深めていくピクルス。そこにクラスでも大柄でいばっているブスケも加わり、忘れられない夏を迎えます。

 個性が違う友だちと一緒にいるからこそ、今まで知らなかった感情や出会えなかった景色を知り、子どもたちの世界はどんどん広がっていきます。相手のことを思いやったり、楽しいことを自分だけでなく、大好きな人と共有したいと思ったり。ちょっとずつ成長していく子どもたちの心の動きがページをめくるたびにキラキラとこぼれ落ちそうです。

 読者の子どもたちの最高の友だちとして、ピクルスが世界を広げてくれること間違いなしです!(小風さち文、夏目ちさ絵、福音館書店、1870円、小学校低学年から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】

「ベアトリスの予言」

 中世ヨーロッパの小さな王国にある修道院のヤギ小屋にひとりの少女が倒れていた。熱が下がり目をさました少女は、自分の名前が「ベアトリス」だということ以外すべての記憶をなくしていた。しかし、神に仕える修道士とごく少数の人たちにしか文字の読み書きが許されていなかった時代に、少女にはそれができた。そこでエディック修道士は少女をかくまうことにするが……。仲間と共に王国の権力に立ち向かうベアトリスにエールを送りながら読み、同時に言葉や物語のもつ力を感じた。(K・ディカミロ作、S・ブラッコール絵、宮下嶺夫訳、評論社、1980円、小学4年生から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「トマト」

 一つぶのトマトの種が土の中で芽を出し、根をのばす。やがて双葉があらわれ、本葉もぐんぐん育つ。もしゃもしゃの毛に包まれたつぼみが開くと黄色い花。花が枯れると子房がふくらみ、それがぷっくりした実になり、だんだんに赤くなる。この絵本は、その過程を、ゆっくりとていねいに見せてくれる。しかも、いつまでも見飽きることのない美しく細かい絵で。一つの実から取れた272個の種を、どれも違うように描いて並べたページもある。その一つ一つの種が、みんな生きる力を秘めているんだね。(荒井真紀作、小学館、1650円、4歳から)【翻訳家 さくまゆみこさん】=朝日新聞2023年5月27日掲載