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長村祥知さん「源頼朝と木曽義仲」インタビュー 両家の命運、丹念に対比

長村祥知さん

 共に反平家の旗を掲げながら、かたや鎌倉幕府を創設し、かたや権門の反発を買って追討された源頼朝と木曽義仲。いとこ同士でもある2人の対比を軸にした概説書を、中世東国の政治史を扱ったシリーズ「対決の東国史」の1冊として出版した。

 京都府生まれ。同志社大と京都大大学院で中世史を学び、2012年から京都府京都文化博物館の学芸員に。コロナ禍の21年4月、後鳥羽上皇と鎌倉北条氏が対決し、武家が政治の主導を握るきっかけとなった政変・承久の乱(1221年)から800年を記念した特別展「よみがえる承久の乱」を企画して話題となった。感染拡大で展覧会が中断されたのちも、展示図録だけが通販で売れ続け、売り切れる事態に。

 「幕府の執権だった北条義時の肖像が描かれた『承久記絵巻』が約80年ぶりに公開されたのが大きかったのでは」と話すが、その絵巻を大阪府の個人宅で発見したのも長村さん。

 成果は編著の『龍光院本 承久記絵巻』(4月刊、思文閣出版)に結実した。地道な調査力と、物事をわかりやすく伝える力の双方を備えた研究者で、21年6月に富山大の講師に就任。富山名物のトラム(路面電車)などを利用しながら京都と行き来し、寺院などの資料調査を進めている。

 初めての一般書となる本書では、頼朝の父の義朝と、義仲の父の義賢の代からの2家の消長を丹念に描いた。「『東国の政治史』を焦点に書き始めた本なのですが、結局、それらと連動した京都と畿内の動きが鍵を握っていたことが鮮明になってしまった」と苦笑する。

 「頼朝が勝ち抜けたのは、平治の乱(1159年)の段階で、頼朝だけが官位を持っており、後白河院とも交流があったことが大きい。歴史を考える際には、より俯瞰(ふかん)的であるべきだと改めて感じました」(文・写真 宮代栄一)=朝日新聞2023年9月9日掲載