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大山卓爾「ずかん 根っこ」 食物連鎖の重要なプレーヤー紹介

本書からダイズの紹介ぺージ。グラフ化した根っこデータや、図版が盛りだくさん。版元によると、「樹木の根っこは研究が難しいために、ネットでもほとんど情報がない」という

 知らない世界はすぐ足元にあった。根っこの世界がこんなに豊かだったとはびっくりした。めちゃ個性ある。太く長い根っこもあれば(例えばクヌギ)、あっさり浅めのもある(例えばサルスベリ)。もじゃもじゃヒゲみたいな根っこもあるし(ススキとか)、土から顔出し、呼吸するのもある(マングローブ植物のオヒルギとか)。水中でゆらゆら揺れたりもすれば(ウキクサなど)、なんと空気中に根っこを伸ばしたりもする(サトイモ科のモンステラなど)。ダイズの根っこはコブの中の菌と一緒に生き、栄養を与え合っている。我々人間がアプローチしてきた根っこもある。大根や人参(にんじん)などがそうだ。「実は根の周りはとてもにぎやかなのです」と本文が書く通り、食物連鎖の重要なプレーヤーとして、根っこは植物を支え、人の命を支えてきた。

 寝っ転がってパラパラめくりながらふと思った。根っこみたいな世界は地上にもある。例えば本書はネイチャーライターが文を書き、イラストレーターが絵を描き、編集プロダクションがデザイン、編集をしているのが最後のページのクレジットでわかる。本って、目立つところだけではない力に支えられているんだよね。=朝日新聞2024年1月20日掲載