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「わたしのくつしたはどこ? ゆめみるアデラと目のおはなし」ほか子どもにオススメの3冊 目の病気、理解深まる仕掛け

「わたしのくつしたはどこ? ゆめみるアデラと目のおはなし」

 アデラは、研究所で生き生き働くダックスフント。でも最近おかしなことが続くのです。引き出しにあるはずの靴下がみつかりませんでした。毎朝の通勤路がわからなくなりました。親友でキリンのバレンティーナの姿が見えませんでした。声は聞こえているのに……なにが起きているのでしょう?

 丸い穴のあいた藍色のページをめくると、画面全体が見え、見失っていたものが現れる仕掛け。読み進むにつれ幼い読者にも、「網膜色素変性症」なんて難しい病名は知らなくても、アデラの視野がだんだん狭くなっていくことが感じられるでしょう。作者自身の体験と実感に基づく必然の仕掛けです。

 視覚障がいへのアデラの自覚と読者の理解が重なる中盤からの展開が、一段とポジティブで魅力的。手触りで、においで、味で、知恵と想像力と他者との歩み寄りで、見失っていたものを再びみつけていきます。

 「IBBYバリアフリー児童図書」に選定されたチリの絵本。動物が主役のコミカルな絵は、ディテールに富んでいて、発見が尽きません。(絵本評論家・作家 広松由希子さん)

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 フロレンシア・エレラ文、ベルナルディータ・オヘダ絵、あみのまきこ訳、岩崎書店、1870円、5、6歳から

「こぐまのいばしょ」

 森の奥の居心地のいい洞穴で、幸せに暮らしていた子グマが、ある日、山火事で避難を迫られる。逃げた先で、おちつける場所を探すが、前からすんでいる者たちに追い払われる。とうとう別の森まで来て、心細くて泣いていると、リスや小鳥が話しかけてくれる。孤独な子グマを、別の森の動物たちがなぐさめ、そのぬくもりに包まれて、何もかもが違うものの、そこが自分の居場所だと子グマは思えるようになる。難民の子どもにもつながる子グマの心の動きを、コラージュを使った絵でていねいに伝えている。(翻訳家 さくまゆみこさん)

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 ブリッタ・テッケントラップ作、三原泉訳、BL出版、1980円、4、5歳から

「ひとつだけ守りたいもの」

 家が火事になった時、なにか一つ持ち出せるとしたら? 家族やペットは無事なので大丈夫。大きさは問いません。

 あるクラスで出た宿題について、授業中意見をかわします。スマホ、パパの財布なんて現実的なものから、野球のパンフレットやお茶のおまけのコレクションまで。人と比べてちっぽけに思ってしまうなど、話し合いの中で色々と葛藤しながらも、真剣に自分にとってゆずれない大切なものを探っていきます。一番守りたいものは自分の核になる部分。自己と向き合える一冊です。(丸善丸の内本店 兼森理恵さん)

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 リンダ・スー・パーク作、ロバート・セーヘン絵、佐藤淑子訳、玉川大学出版部、1980円、小学5年から=朝日新聞2024年10月26日掲載