関西・九州を拠点に活動する作家ら16人が参加した舞台「なにげに文士劇2024」が16日、大阪・梅田で上演された。東野圭吾さんのデビュー作「放課後」を原作に、演出家の村角太洋さんが脚本と演出を担当した。大阪での文士劇は66年ぶり、素人芝居とは思えない本格的なミステリー劇を約900人が堪能した。
「放課後」は東野さんの江戸川乱歩賞受賞作。昭和後期の高校を舞台に連続殺人事件が起きる学園ミステリーだ。主役のアーチェリー部顧問の教師・前島は東山彰良さん。ほぼ出ずっぱりの彼の内面描写を、他の出演者が入れ代わり立ち代わり登場しながら語っていく演出(脳内前島)が斬新だ。
実行委員長を務めた黒川博行さん演じる生徒指導部長の教師が密室で殺されるあたりから、舞台はサスペンス味を増す。刑事役の門井慶喜さんの前島への事情聴取は緊張感にあふれ、秀才の剣道部主将役の上田秀人さんが立て板に水のごとく密室トリックを解き明かす。殺害現場の更衣室を再現した大道具を含め、随所にミステリー愛を感じさせた。
シリアスなだけではない。黒川さんのマージャン好きなど作家本人の属性を交えたくすぐりあり、演者一同による「Choo Choo TRAIN」のぐるぐるダンスありと、随所にエンタメ色も。ふだんは見られない作家たちの一面にふれ、カーテンコールでは観客席から拍手が鳴りやまなかった。
文士劇実現への口火を切った朝井まかてさんは「どうせやるなら、従来の文士劇のイメージを超えたかった。予算が少ないなか、音響や照明など本職のスタッフの力に助けられた。続けていくことに意味があると思うので3~4年後にまたやりたい」と振り返った。(野波健祐)=朝日新聞2024年11月27日掲載