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日本社会学会が創立100周年 領域横断的で自由なアプローチ、上野千鶴子氏ら強調

(右から)ジェフリー・プレイヤーズ、上野千鶴子、佐藤嘉倫、森千香子の各氏が登壇した記念シンポジウム=11月10日、京都市北区の京都産業大学

 日本社会学会が1924(大正13)年の創立から100周年を迎えた。歴史をふまえた次の時代の課題が議論されている。

 会長を務める佐藤嘉倫・京都先端科学大学教授(数理・計量社会学)は「フランス革命と産業革命の後に生まれた社会学は、大きな社会変化のたび更新を重ねてきた」と話す。

 日本では敗戦後しばらく農村調査などの実証研究が盛んで、次いで高度成長期にはメディア論や日本社会論、社会意識論が注目された。70年代からはフェミニズム研究が始まる。

 90年代はバブル崩壊や阪神・淡路大震災、オウム真理教事件などが続き、社会病理を一望する論客が発言。カルチュラルスタディーズも新風を吹き込んだ。2000年代に入ると不平等や格差の実証研究が話題に。近年は大規模統計調査とともに、生活者の語りを再現する質的調査が関心を集めている。

 会員は約3600人。「主観的には女性が活躍している」(佐藤会長)そうだ。

 11月9、10日に京都市で開かれた学会大会では70を超す分科会で議論が行われ、話題のAI(人工知能)やマッチングアプリの浸透、ロボットと人間の対等性などについて問題提起があった。

 記念シンポジウムは、ジェフリー・プレイヤーズ国際社会学会会長(社会運動論)と上野千鶴子・東京大学名誉教授(女性学・ジェンダー研究)が登壇。プレイヤーズ氏は、民主主義の現状や気候変動問題という「多重の危機」の一方、興味深い時代だとも述べた。社会学自身が欧米中心・男性中心主義を批判され、概念を再定義してきたように、様々な視点を持ち寄り世界をよりよく理解する機会だと語った。

 上野氏は、学問の中立性と客観性に挑んだ点で、フェミニズムは近年脚光を浴びる当事者研究を先取りしたと述べた。また社会学の領域横断的で「貪欲(どんよく)」「自由」なアプローチが、他学問に影響を与えたとも。

 「私」の関心から学問を始めてよい。両氏ともそう後進を鼓舞し、他者の小さな声に耳を傾けることが肝要と呼びかけた。(藤生京子)=朝日新聞2024年12月4日掲載