
江戸の出版文化に焦点をあてた展覧会が都内各地で開かれている。おりしも放送中のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」は、江戸期を代表する出版人の蔦屋重三郎が主人公。ドラマの背景にある出版事情の理解が進む企画が並ぶ。
国学院大学博物館(渋谷区東)の企画展「江戸の本屋さん 板元と庶民文学の隆盛」は、江戸前期の上方文学とは異なる特徴を持つ文芸「江戸戯作(げさく)」の歴史をたどる。狂歌の第一人者・大田南畝や戯作のヒットメーカー・山東京伝ら文人、蔦重や鱗形屋(うろこがたや)孫兵衛ら板元(本屋)の仕事ぶりを、同大図書館所蔵の資料を通じて概観できる。20日まで(月曜休館)。
国立公文書館(千代田区北の丸公園)の特別展「書物がひらく泰平―江戸時代の出版文化―」は印刷技術に着目し、江戸時代に特徴的な版本(版木を彫って印刷した書物)の数々を紹介する。人気絵師・歌川国芳の絵と共に日本の由来を記した読本「日本国開闢(かいびゃく)由来記」、享保7(1722)年に幕府が書物出版についての規制を記した「御触書(おふれがき)」などが並ぶ。5月11日まで。
東京都立中央図書館(港区南麻布)の「情報、江戸を駆ける!蔦屋重三郎が生きた時代の出版文化」展の会場では蔦重の本屋「耕書堂」の店先を模型で再現。本だけではなく、黒船来航の際に発行された瓦版、イベント告知の浮世絵などの刷り物を複製資料で展示している。5月25日まで(4月18日、5月1、16日休館)。
いずれの展覧会も入場無料。(野波健祐)=朝日新聞2025年4月9日掲載
