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「革命のヨーロッパ」書評 「多様性の中の統一」を証明せん

評者: 中澤達哉 / 朝⽇新聞掲載:2026年09月26日
革命のヨーロッパ: 西欧人の〈自叙伝〉で読む過去・記憶・再生の歴史哲学 著者:オイゲン=ローゼンシュトック=ヒュシー 出版社:刀水書房 ジャンル:歴史

ISBN: 9784887084940
発売⽇: 2026/05/15
サイズ: 15.5×21.5cm/800p

「革命のヨーロッパ」 [著]オイゲン=ローゼンシュトック=ヒュシー

 東欧をはじめ、光の当たりにくい地域の貴重な歴史書を48年にわたり世に送り出してきた刀水書房が、先月末をもってその歴史に幕を閉じた。その損失を惜しみつつ、同社が本年5月に刊行した翻訳書に目を向けたい。
 世界恐慌の荒波の中、ナチズムの足音が迫る1931年のドイツで本書は産声をあげた。ユダヤ系としてベルリンに生まれた著者は、23年から現ポーランドのヴロツワフ大学で教鞭(きょうべん)をとっていたが、ヒトラー政権誕生後に米国への亡命を余儀なくされた。本書はまさに、故郷を追われる直前の知識人が、引き裂かれゆく欧州に一縷(いちる)の望みをかけ綴(つづ)った精神の防波堤。
 本書の核心は、後に英語版で掲げられた「西欧人の自叙伝」という副題に集約される。ここでいう西欧とは、単に地理的な意味ではない。中世の教皇革命からロシア革命に至るまで、千年にわたり諸革命が連鎖した、中・東欧を包むキリスト教世界。ゆえに、国粋主義が台頭し、ドイツ精神の優越が声高に叫ばれた時代に、筆者は反旗を翻した。ドイツの個性もまた、欧州の諸革命の遺産から形作られたものではないか。欧州史とは、諸民族が互いの革命を模倣し、反発し合いながら紡いできた、壮大な「自叙伝」なのだと。
 さらに本書は政体循環史観を批判し、欧州では常に君主制・貴族制・民主制も、資本主義も社会主義も共存していたという。このモザイク的視座こそ、多民族・多制度の境界で生きた著者の中・東欧的発想の真骨頂だ。
 革命とは、人類が新たな言葉と時間を作り出し、死に瀕(ひん)した社会を「再生」させる営み。著者は亡命後、ロシア革命から歴史を遡(さかのぼ)る構成へ本書を改訂した。そこには、当時のナチの危機から逆算して、失われゆく欧州の「多様性の中の統一」を証明せんとする執念が宿る。排外主義が跋扈(ばっこ)し、自国ファーストが臆面もなく叫ばれるこの危機の時代にこそ、未来への道標となる一冊だ。
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Eugen Rosenstock-Huessy 1888~1973。社会哲学者▽刀水書房は販売、問い合わせに対応している。
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宮島直機訳