ISBN: 9784490211252
発売⽇: 2026/07/28
サイズ: 18.8×3cm/432p
「アメリカの本屋さんの歴史」 [著]エヴァン・フリス
記者として米国に駐在中、南部テネシー州ナッシュビルに開店したばかりの書店を訪ねた。ネット注文や電子書籍の大波をかぶって地元書店が撤退したことを嘆いた女性作家が、自ら30万ドルもの大金を出資して開いたという話題の店だった。
ペルー大使公邸人質事件を題材にした長編「ベル・カント」などで知られる小説家のアン・パチェットさん。幼いころから親しんだ書店が廃業し、精魂込めて書き上げた新作を並べてくれる書店が地元から消えた。仕方なく額縁屋や仕立屋の店頭に置いてもらうが、気持ちは沈んだという。
取材時の私の率直な印象をここで申し上げるなら、店が軌道に乗るかどうかの先行きは五分五分にしか見えなかった。
だが今回、本書を読んで大いに安堵(あんど)した。「本屋さんという絶滅危惧種を私は守りたい」。そう訴えたパチェットさんらの奮闘が実を結び、開店から15周年を迎える現在も店は大いににぎわっていると書かれていたからだ。店舗を拡張したほか、空港内に支店を開き、児童向けの移動販売車も導入したという。
本書の著者は筋金入りの書店好き。ただ大企業が経営するチェーン書店には「個性がない」と冷ややかで、その熱い愛はもっぱら独立系の書店に注がれる。
本書でも、建国の父フランクリンがフィラデルフィアで営んだ書店をはじめ、ボストンやシカゴなど各都市に逸話を残した名物書店の盛衰を詳述。返す刀で、ネット通販大手アマゾンが開いた実店舗の書店を訪ね、魂の入っていない書架がいかに空疎かを力説する。
この三十数年の間に全米の書店の54%が姿を消した。人々が読書に充てる時間も減っている。だが著者は、書店という営みの将来を過度に悲観はしない。かと言って人気作家が経営する書店の成功だけを取り上げてバラ色の未来像を振りまくわけでもない。歴史家ならではの絶妙なさじ加減が各章を貫く。
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Evan Friss 米ジェームズ・マディソン大歴史学教授(アメリカ史、都市史)。妻が書店を営む。
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稲垣みどり訳