台湾なら、それまでに何度も行ったことがあった。台湾を、それなりに知っているつもりでいた。ところが、私が知っていると思っていた「台湾」は、台北の、それも、わずか一部でしかない。
そう気づかされたとき、台湾という土地、台湾にいる人たちが、今の「台湾」をどのように形づくってきたのか探究する、私の思索の「旅」は始まった。
政治、社会、歴史。その「来歴」を学ぶにつれ、「台湾」の底知れぬ奥深さは、私個人のちっぽけな経験だけでは把握し得ないと突きつけられてばかりいる。台湾を学ぶ私のこの「旅」は、なかなか終わらなさそうなのだ。
本書のタイトルは、その名も「旅して学ぶ台湾」。
「先史時代」までさかのぼり「民主社会」が実現した現代に至るまでの、「穏やかであたたかなものばかりでは」ない台湾の歴史とむきあいながら「ただ食を楽しみ、風景の美しさに心をふるわせ」る以上の「旅」の仕方を提案する一冊だ。
中高生向けの易しい文体でありながら、台湾を語る際にいやおうなくつきまとう、様々なややこしさも決してないがしろにはしない執筆陣の筆力に目を見はる。各章に登場する「関連スポット」の紹介と、「おすすめの見学コース」(1日プランと3~4泊プラン)や巻末の「年表」もありがたい。
格好の「台湾入門」であると同時に、台湾認識を深めるための「指南書」とも言えるこの本と、もっと早く出会いたかった。いや、今からでも遅くはない。長い年月をかけて培われてきた「台湾の民主主義」は現在も試練の中にある。台湾。この土地、この民たちによる「自由」への希求と、それを維持すべく努めてきた歴史を、日本にいる私たちが見習わないのはもったいない。=朝日新聞2026年10月3日掲載
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岩波ジュニア新書・1034円。26年5月刊、3刷1万7千部。担当者は「修学旅行の事前・事後学習に、と考えて企画した。先史時代から民主化以降の現代までを含むことが特色で、大づかみな歴史を知りたい方との相性もいい」と話す。
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著・赤松美和子、洪郁如、胎中千鶴、山﨑直也、劉彦甫