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「ルポ 大阪・生野」書評 日本社会を映す多文化共生の場

評者: 高谷幸 / 朝⽇新聞掲載:2026年10月31日
ルポ 大阪・生野 人口2割が外国籍の街 著者:玉置 太郎 出版社:朝日新聞出版 ジャンル:社会学

ISBN: 9784022521569
発売⽇: 2026/09/18
サイズ: 18.8×2.6cm/400p

「ルポ 大阪・生野」 [著]玉置太郎、大瀧哲彰

 大阪市の南東部に位置する生野区は、日本最大の在日コリアン集住地区として知られてきた。近年は、コリアンの日本国籍取得が進む一方、ベトナムや中国、ネパールなど他の外国籍者が増加している。こうした構成の変化はあるものの住民の外国籍比率は二割強と、都市部では日本で最も外国籍住民の割合が高い市区町村である。
 同時に生野区は、人口減少と少子高齢化にも直面してきた。本書の舞台の一つになっているのも、子ども数の減少で廃校になった小学校跡地で、NPOと企業が運営する「多文化共生の拠点」だ。生野区は、日本社会の課題を映し出すとともに、その課題に向き合う実践が多様に展開されている地区なのだ。
 本書は、生野区で外国にルーツをもつ人びととの共生に関わる場、具体的には、学習支援教室、商店街や地域、歴史資料館、多様なルーツの生徒が通う高校、朝鮮学校、難民カフェを対象に、地域社会の日常と地続きにある共生のあり方を描き出す。K―POP人気で多くの人びとが集うようになった場の地層に刻まれた在日と日本人の歴史、そこに、さらに多様な人びとがさまざまな経路で辿(たど)り着き、地域住民と重ねる日々の接触。そして公教育や行政も関与しながら、ともにまちを創り出している現代の営みに光を当てる。
 こうした生野の実践の特徴は、マイノリティのルーツを肯定すると同時に、かれらが直面する社会経済文化的な格差を是正する仕組みや場づくりに官民協働で取り組む点にあり、他地域にも大きな示唆を与えるだろう。
 一方、現政権では、外国人の総量規制が模索されている。そこでは、大阪発の日本維新の会が先導する形で、外国人が人口の一〇%を超えると緊張が高まり、日本社会が根本的に変わるという話がまことしやかに語られる。だが、生野の経験は、そうした議論を机上の空論として問い直す厚みと広がりに満ちている。
    ◇
たまき・たろう 1983年生まれ。朝日新聞記者。おおたき・てつあき 1995年生まれ。朝日新聞記者。生野に3年半住んだ。