「マルコとパパ ダウン症のあるむすこと ぼくのスケッチブック」
「絵ならやぶりすてられる。消して、もういちどかきなおしてもいい」「だけど、子どもは……」。作者の胸の内が吐露されるショッキングな冒頭。グスティは、アルゼンチン出身の国際的に活躍する人気絵本作家だ。ダウン症のある息子マルコの誕生を最初は「うけいれられなかった」という。
父の目で描く心の画帳。悶々(もんもん)とコミカルな自問自答、包容力のある妻や核心をつく幼い長男テオの言葉、マルコと遊びながら発見を繰り返すいとしい毎日が、彩り豊かに描かれる。
自由で巧みなデッサン、誠実でユーモラスな表現。眺めて読んで多様性の本質を味わう。大人のひとりごとにせず子どもと共有できる、訳語の選択や文字のバランスの配慮がにくい。(絵本評論家・作家 広松由希子)
★グスティ作・絵、宇野和美訳、偕成社、税抜き2800円、小学校中学年から
「たんじょう会はきょうりゅうをよんで」
今年の誕生会は「ほんかくてき」にしよう! 準備も完璧。なのに招待していないきょうりゅうがやってきた。予想外のお客様、どんな風にお相手をするのかな? 「ほんかくてき」を実行するため、背伸びをしたいぼくときょうりゅうが精いっぱい礼儀正しく振る舞うやりとりと、小さな友情が芽生える様がかわいい。(丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵)
★如月かずさ作、石井聖岳絵、講談社、税抜き1200円、小学校低学年から
「ヒトラーと暮らした少年」
実在した人物ヒトラーが登場するこの物語には独特な緊張感が漂い、知らないうちに大きな力に巻き込まれていくことの恐ろしさが伝わってくる。主人公のピエロはフランスの孤児院で暮らしていたがドイツの山荘で働く叔母にひきとられ、そこでヒトラーと会う。周りに感化されながら変わっていく少年に心が痛む。(ちいさいおうち書店店長 越高一夫)
★J・ボイン著、原田勝訳、あすなろ書房、税抜き1500円、中学生から=朝日新聞2018年3月31日