冬休み。ゆっくり読書をしたり、家族と過ごしたりするこの時期に、選者のみなさんがおすすめする8冊を紹介します。(○=新刊、●=既刊、価格は税抜き)
○「図書館にいたユニコーン」(徳間書店)
トマスは森で遊ぶのが大好きで、本を読むのが嫌いな男の子。彼が図書館で出会った、木でできたユニコーンとすてきなお話をしてくれる司書のおかげで、本を大好きになるところにひきつけられた。本の持つ力を改めて感じさせてくれる物語=小学校中学年から(M・モーパーゴ作、G・ブライズ絵、おびかゆうこ訳、1300円)
●「カランポーのオオカミ王」(岩波書店)
カランポー地方の人々を、長い間苦しめていたオオカミ王ロボとシートンとの迫力満点の対決シーンが見事で何度でも読みたくなる。動物画家・博物学者として知られていたシートンがこのハイイロオオカミとの出会いにより、動物物語作家として大きく羽ばたくことになったいきさつがよく分かる。力強いタッチのイラストにも注目してほしい=小学校中学年から(W・グリル作、千葉茂樹訳、2000円)
【ちいさいおうち書店店長 越高一夫】
○「わたしたちのたねまき」(のら書店)
春になったら芽を出す種。その種まきをするのが人間だけじゃないって、知ってた? 風も小鳥も太陽も雨も川もウサギもキツネもリスも種まきをしているんだって。どうやって? この絵本を見ると、わかってくるよ。見返しに様々な種の絵が描いてあるのもおもしろいね=小学校中学年から(K・O・ガルブレイス作、W・A・ハルパリン絵、梨木香歩訳、1600円)
●「月夜のみみずく」(偕成社)
みんなが寝静まった冬の夜更け、女の子が父親と一緒に雪を踏みしめながら森の中へと入っていく。そっと静かに耳をすませて。ミミズクに会うために。日常とは違う不思議な時間を父親と共有し、自然の驚異に触れたときの、胸のときめきが伝わってくる絵本=小学校低学年から(J・ヨーレン詩、J・ショーエンヘール絵、工藤直子訳、1200円)
【翻訳家 さくまゆみこ】
○「絵物語 古事記」(偕成社)
「ヤマタノオロチ」や「稲羽(いなば)の白うさぎ」。実はこれらのお話は日本の成り立ちが書かれている最古の史書、「古事記」の一節。たくさんの神様が出てきますが、乱暴だったり、わがままだったり、やられたらやり返したり、何とも人間臭く魅力的。私たち日本人のルーツが詰まっています=小学校中学年から(富安陽子文、山村浩二絵、1600円)
●「ツツミマスさんと3つのおくりもの」(小峰書店)
包まれたものを開けるのって、本当にワクワクします。初めて包みを開けた時から、その魅力のとりこになったツツミマスさん。とうとうお店を開きます。ちょっと変わったものだってなんのその。どんなものも包みます。贈り物を選んだ人の思いごと丁寧に包んでいくと、最上級のプレゼントに!! 誰かにあたたかい気持ちを贈りたくなる一冊=小学校低学年から(こがしわかおり作、1100円)
【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵】
○「ふるいせんろのかたすみで」(ロクリン社)
個性的な貧しいお年寄りが暮らす古びた長屋が舞台。8人で毎週お金を出し合って1枚だけ買うサッカーくじがお楽しみ。ある朝、大当たりの通知が届き、狂喜した彼らの暮らしは一変? 40年以上前のイギリス絵本を新訳で。多様な生き方に鑑みて、自分についても考える=小学校中学年から(C・キーピング作、ふしみみさを訳、1600円)
●「かぞえうたのほん」(福音館書店)
歌って楽しい、見ておかしい。「いちくん いちごの たねだけたべた」で始まる「へんなひとかぞえうた」などユニークな数え歌が6編、奔放で技法も多彩な絵とタッグを組んで読者を笑わせる。内容は珍妙でも日本古来のわらべうたのリズムは誰の口にもなじみやすく、世代を超えてゆかいな気持ちに=3歳から(岸田衿子作、スズキコージ絵、1100円)
【絵本評論家・作家 広松由希子】=朝日新聞2017年12月23日掲載