「2040年の新世界—3Dプリンタの衝撃」書評 「どんな形も」の期待と課題
評者: 内澤旬子
/ 朝⽇新聞掲載:2015年03月01日
2040年の新世界 3Dプリンタの衝撃
著者:ホッド・リプソン
出版社:東洋経済新報社
ジャンル:技術・工学・農学
ISBN: 9784492581056
発売⽇: 2014/12/12
サイズ: 20cm/473,15p
2040年の新世界—3Dプリンタの衝撃 [著]ホッド・リプソン、メルバ・カーマン
3Dプリンタが個人レベルでも利用できる時代が到来した。どんな形状のものでも一個単位から作ることができると言われても、技術に想像力が追い付かない。これから製造業がどう変わるのかもわからず、漠然と不安だ。
そんな人に向けて本書は懇切丁寧に、3Dプリンティングという技術の全貌(ぜんぼう)と現状を紹介する。機械的な仕組みや素材、設計ソフト、医療や建築、料理、教育などの用途、エネルギー効率、環境にかかる負荷、知的所有権など、現在どこまでが可能で、今後何が課題となるかまで指摘。
読後に感じたのは、ある種の安堵(あんど)。パソコンやタブレット端末黎明(れいめい)期の混乱と高揚にどこか似ているのだ。義肢やアクセサリーのような、今あるモノをより精密に個人に合わせて作るだけにとどまらない、さらにドラスティックな変革が訪れようとしているのだろうけれど、基本はデジタルとウェブの文脈でのことと判(わか)り、肚(はら)は据わった。怖がるよりは楽しみたいと思えた。
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斉藤隆央訳、東洋経済新報社・2376円