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「グローバル化する靖国問題」 首相参拝への静かな怒り

評者: 保阪正康 / 朝⽇新聞掲載:2018年06月09日
グローバル化する靖国問題 東南アジアからの問い (岩波現代全書) 著者:早瀬 晋三 出版社:岩波書店 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784000292139
発売⽇: 2018/03/16
サイズ: 19cm/224,22p

グローバル化する靖国問題 東南アジアからの問い [著]早瀬晋三

 1985年の中曽根康弘首相の靖国神社参拝を「靖国問題のはじまり」とみて、その後の首相参拝をアセアン(東南アジア諸国連合)10カ国はどう見てきたか、各国の英字紙を参考に分析を試みた書である。多くは太平洋戦争下で日本軍の侵略を受けた地域だ。
 中国と韓国の反発に同調するか、距離を置くか。東南アジアの国々にとって日本は最大の「経済援助供与国」だった。小泉純一郎首相の時代には表立った抗議はしていない。中国の経済大国化と共に変化が起こる。尖閣問題での日中対立によって、第三者の目から、地域の危機ととらえる当事者の視点へ変わる。
 2013年の安倍晋三首相の参拝には中韓だけでなく、米英、EU、アセアン各国からの批判があった。タイ紙は、近隣諸国の気持ちを害さないで戦死者を敬う方法を見つけよと説く。日本では中韓の批判しか語られないが、東南アジアの国々の静かな怒りを理解する必要があるように思う。