朝井まかて「恋歌」書評 歌一筋に生きた女の劇的な半生
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2013年09月15日
恋歌
著者:朝井 まかて
出版社:講談社
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784062185004
発売⽇: 2013/08/22
サイズ: 20cm/281p
恋歌 [著]朝井まかて
気鋭の時代小説作家が、樋口一葉の師として知られる歌人、中島歌子を描いた。幕末から明治にかけて、過酷な運命の下でひたむきに生きる女たちの重厚な物語だ。
明治後期、歌子の部屋で、教え子の三宅花圃(かほ)は紙の束を見つける。200枚をこえる紙には、「師の君」と呼ばれ、いつまでも娘のような恩師からは想像のつかない、激しい恋と壮絶な過去が記されていた。
歌子の半生が劇的だ。水戸藩士と結ばれ、嫁いだ歌子を待っていたのは天狗(てんぐ)党の乱。賊徒の妻として捕らわれ、周りの女や子どもが次々と処刑されてゆく。歌子はなぜ手記を残したのか。なぜ歌一筋に生きたのか。絶望を前に女たちが詠む歌が心を揺さぶる。
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講談社・1680円