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どんな領域も同時に扱う多様性

レジリエンス復活力 あらゆるシステムの破綻と回復を分けるものは何か 著者:アンドリュー・ゾッリ 出版社:ダイヤモンド社 ジャンル:経営・ビジネス

価格:2592円
ISBN: 9784478012338
発売⽇:
サイズ: 20cm/401p

災害や大混乱によって破綻するシステムと安定を取り戻すシステムの違いは何か。急激な状況変化に適応できる組織や機関、システムはどうすれば構築できるのか。その答えを探る新しい研…

評者:田中優子 / 朝⽇新聞掲載:2013年04月14日

レジリエンス 復活力 [著]アンドリュー・ゾッリ、アン・マリー・ヒーリー

 まだなじみの無い言葉だが、すでに「レジリエンス resilience」は新しい目標として世界に広まりつつある。レジリエンスとは、外部から力を加えられて崩壊しかかった人やものやコミュニティーや組織が、立ち直る力のことである。復活力、復元力と訳されるが、完全にもとに戻ることではなく、働きと健全性が維持できる程度に戻ることを意味する。たとえばいま東日本では、津波対策として極めて高いコンクリートの防潮堤を海岸に巡らす計画が進んでいる。これはレジリエンスとは正反対の方法だ。ひとたび破壊されたら元の状態に戻れない。レジリエンスは防御力ではなく、適応力、敏捷(びんしょう)性、協力、つながり、多様性によって復元する方法なのだ。
 多くの事例が書かれている。ジャマイカでは計画漁業をおこなっていたのに、ウニが全滅し藻類が繁茂しサンゴ礁が死滅した。環境保護は多様な生き物全体を捉える必要がある。本書はそれを金融危機と同じだと見る。金融は同調が起こったときいっきに崩壊する。レジリエンスには多様性が不可欠なのだ。
 自然環境、金融、コミュニティー、組織、個人など、危機が訪れるあらゆる領域を同時に扱う。そこが面白い。結核菌とテロ組織は、活動規模を機敏に拡大縮小する能力に見習うべきところがある。三種の樹木層からなる混成森林を育て、中心を動物保護区としたボルネオの事例では、コミュニティー、経済システム、生物多様性、生態系がレジリエンスを取り戻した。井戸にヒ素が混じったバングラデシュでは、現場の生活を知らない外部の介入が差別や争いを生んだ。パラオでは漁業資源が激減したが、ある管理官が漁師たちと対話し、ダイバーから環境税を取り、コミュニティーを回復させた。レジリエンスはボスではなく通訳型リーダーがふさわしい。学ぶこと満載だ。復興の方法を今なら見直すことができる。
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 須川綾子訳、ダイヤモンド社・2520円/Andrew Zolli ナショナル・ジオグラフィック協会フェロー。