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「原爆症認定訴訟が明らかにしたこと」書評 内部被曝否定する国側が敗訴

評者: 上丸洋一 / 朝⽇新聞掲載:2012年07月08日
原爆症認定訴訟が明らかにしたこと 被爆者とともに何を勝ち取ったか 著者:東京原爆症認定集団訴訟を記録する会 出版社:あけび書房 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784871541091
発売⽇:
サイズ: 21cm/397p

原爆症認定訴訟が明らかにしたこと [編]東京原爆症認定集団訴訟を記録する会

 放射線は人体にどんな影響を及ぼすのか。福島第一原発の事故発生以来、この問題が社会の重大関心事となった。きわめて深刻に考える専門家がいる一方、楽観的にみる専門家もいて判断が難しい。
 しかし、司法の場ではすでに一定の考え方が示されている。原爆の放射線による内部被曝(ひばく)や残留放射線の影響をほとんど否定してきた国側はこの10年間、各地の被爆者が起こした集団訴訟で相次いで敗れてきた。
 本書はこのうち、東京で起こされた集団訴訟の原告の被爆者や弁護士、証言に立った医師、学者らの手記、座談会記録を集める。この間の経過をたどり、裁判にかけた被爆者らの思いにふれながら、問題の所在を理解することができる。
 裁判は、原爆症認定申請を却下された被爆者が国を相手取り、却下処分の取り消しなどを求めて2003年に始まった。国側の証人はこの中で「被爆後、頭髪が抜けたのはストレスのせい、下痢をしたのは衛生状態が悪かったから」などとして放射線の影響を否定。疫学調査をもとに国側は、原告の疾病と被爆の間に因果関係はない、と主張してきた。
 これに対し裁判所は、国側が依拠する被曝線量推定方式には限界が含まれると指摘。疾病が放射線に起因するかどうかは被爆者の生活歴、病歴などから総合的に判断しなければならないとして、原告側主張を基本的に認めてきた。
 「国は認定却下を繰り返して、被爆者が死に絶えるのを待っているのではないでしょうか」
 原告の一人は、そうつづる。原爆投下から67年、多くの被爆者がこれまで援護の対象から外されてきた。一方で国は原発を推進し、今回の福島の事故が起きた。この事実は重い。伊藤直子ほか『被爆者はなぜ原爆症認定を求めるのか』(岩波ブックレット)も参考になる。
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あけび書房・3990円/記録する会は、東友会、原爆症認定集団訴訟東京弁護団、東京おりづるネットで構成。