「必生 闘う仏教」書評 インドの仏教復興運動の先頭で
評者: 中島岳志
/ 朝⽇新聞掲載:2011年01月16日
必生闘う仏教 (集英社新書)
著者:佐々井 秀嶺
出版社:集英社
ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784087205619
発売⽇:
サイズ: 18cm/197p
必生 闘う仏教 [著]佐々井秀嶺
1967年にインドに渡り、仏教復興運動の先頭に立ってきた佐々井氏。彼は多くのインド人仏教徒から支持され、2003年にはインド政府少数者委員会の仏教徒代表にも選出された。本書は、彼の語りをまとめた一冊。
インドでは「ダリト」といわれる最底辺のカーストの人々が、ヒンドゥー教を捨てて仏教徒に改宗する動きがある。佐々井氏は彼らを率い、その権利獲得を訴えてきた。
佐々井氏は、ヒンドゥー教徒が握るブッダガヤーの大菩薩(ぼさつ)寺管理権を仏教徒の手に奪還する闘争を展開。時に命を狙われてきたという。
彼は厭世(えんせい)的な仏教を嫌い、「闘う仏教」を標榜(ひょうぼう)する。不当な行為に対しては非暴力で徹底的に抵抗し、時には「必要最小限の力の行使」を選択する。曰(いわ)く「座禅や瞑想(めいそう)は、立ち上がってからなにをするか、そのためにあると思います」。
苦悩の中、自殺未遂を繰り返し、絶望の淵(ふち)に立った若き日のことも赤裸々に語られている。仏教との出会いも生々しい。
「さあ、立ち上がってください」というメッセージは重い。
中島岳志(北海道大学准教授)
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集英社新書・735円