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新書ピックアップ(朝日新聞2018年7月21日掲載)

『素敵な石ころの見つけ方』

 河原や海岸で見られる石ころたちは、自然の営みのすごさ、不思議さを語りかける。地表に噴出したマグマが冷え固まった火成岩、生物の遺骸や泥などが積み重なり固まった堆積岩、地中深くで高温や高圧の環境に置かれ変成した変成岩……。石ころ探しを安全に楽しむノウハウや、石ころ探しの国内外のスポットを紹介。
★渡辺一夫著 中公新書ラクレ・972円

『家族の秘密』 

 暴力被害や出自をめぐり親が言葉にできない不安や傷を抱え込むとき、子どもは何かが秘密にされていることをしぐさや雰囲気で感じ取り、さまざまな反応を引き起こす。自然災害や戦争を含む社会のカタストロフで生じるトラウマでも、記憶を媒介する家族の役割は大きい。克服されない苦悩が世代を超えて伝わり跳ね返る過程と対処を、精神科医・精神分析家が説く。
★セルジュ・ティスロン著、阿部又一郎訳 文庫クセジュ・1296円

『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』

 早く読めなくても、内容を忘れてしまってもかまわない。そんな自分を認めて解放されようと、いまや年間700冊を読む書評家は提案する。そのうえで、読んだ内容の印象を周囲の環境情報と結びつけて記憶するテクニックを紹介。駅のベンチや近郊の山頂で読み、SNSや雑記帳にざっくり書いて、楽しむことこそ習慣化への近道のようだ。
★印南敦史著 星海社新書・1037円


『人間にとって病いとは何か』 

 「精神と肉体という二つの要素に支配されながら生きる」人間にとって、病気は避けることができない経験でもある。戦争と少女期、50歳過ぎて訪ねたアフリカでの経験、そして夫をみとった日々を回想しながら自身の老境と向き合う作家が、時代とともに変化してきた生活のありようや家族生活、食への意識などを通して、総体としての人間を再考、人生をどう生きるかをめぐってつづったエッセー。
★曽野綾子著 幻冬舎新書・842円