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保護への情熱つたわる奮闘記「絶滅危惧種はそこにいる」など注目の新書5選

「絶滅危惧種はそこにいる」

 アマガエルやゲンゴロウなど、かつて身近だった生物たちが今、絶滅の危機にある。こうした生物の保護・増殖に情熱を傾ける著者の奮闘記。水を抜いて池の手入れをする「かいぼり」活動はテレビでも取り上げられるように。外来種のコイが生態系を壊してしまう事実には驚かされる。
★久保田潤一著 角川新書・1034円

「哲学で抵抗する」

 イタリア、フランスの現代思想を研究する著者は、哲学は自分で思考し「勝とうが負けようが」世界の見え方を更新する知的抵抗だと説く。ヴィスコンティとキューブリックの映画、萱野茂のアイヌ文化研究、ヴォルテールやヴォネガットの小説、キング牧師の手紙も論じる異色の入門書。
★高桑和巳著 集英社新書・902円

「海外メディアは見た 不思議の国ニッポン」

 銀メダルを獲得したのになぜ日本人選手は謝るのか。東京五輪を取材した米ニューヨーク・タイムズは、成功の基準の厳しさや独特の謝罪文化を説明する。ほかに、若者の投票率の低さ、女性皇族の苦悩などを複数のメディアの報道で読み解く。
★クーリエ・ジャポン編 講談社現代新書・990円

「読書とは何か」

 「さらさらと流れていく“流動食”本は読み手の記憶にあとを残さない」。そんな本があふれているという進化生物学者は、読書は狩猟だと説く。「読書効率主義」を排し、西村三郎『文明のなかの博物学』をはじめ「歯ごたえのある分厚い本」を挫折せず読みこなす技法を紹介する体験的読書論。
★三中信宏著 河出新書・979円

『「やりがい搾取」の農業論』

 日本の農業は「食糧生産係」に甘んじ、社会の尊敬を集めてこなかったと著者はいう。農地改革以降の歴史をたどり、高品質の農産物が安値でしか売れない構造を概観。1本5万円のレンコンを販売する自身の試みに触れ、農家特有の職人的技術をビジネスに転じるべきだと訴える。
★野口憲一著 新潮新書・836円=朝日新聞2022年3月5日掲載