近代立憲主義は、世界観をめぐる血みどろの闘争の末、西欧で生まれた。価値は比較不能で、何が正しいか、決まらない。多様な価値観を平和的に共存させる枠組みが憲法で、人が生きる意味を語らない。
こうした従来の立憲主義の理解に正面から挑み、新たなかたちを模索するのが、江藤祥平・上智大准教授の『近代立憲主義と他者』(岩波書店・3672円)である。
憲法96条改正提案、集団的自衛権行使容認への政府解釈の変更……。立憲主義は危機的状況だ。このままでは「化石化」してしまうと江藤は考える。「他者の不在」が原因で、活力を失っているためだという。現象学を方法論として使い、江藤は立憲主義に「他者」を取り入れようと試みる。比較不能な複数の他者をあえて比較し、痛みを引き受けよ。平和を希求する「選民」として、憲法9条を持つ日本人は責任を果たすべきだ――。新たな憲法の「物語」を立ち上げようとする、江藤の議論は熱い。
取り扱いを間違うと大やけどしかねない劇薬である。(編集委員・豊秀一)=朝日新聞2018年9月15日掲載
編集部一押し!
-
朝宮運河のホラーワールド渉猟 目からうろこのホラー映画講義 「男と女とチェーンソー」訳者・小島朋美さんインタビュー 朝宮運河
-
-
トピック 【PR 光文社・創英社・みすず書房・ミネルヴァ書房】プレゼント 朝日新聞1面広告の本、好書好日メルマガ読者計20名様に 好書好日編集部
-
-
杉江松恋「日出る処のニューヒット」 深町秋生「血は争えない」 避けられない運命描く本格ピカレスク小説(第38回) 杉江松恋
-
えほん新定番 みねおみつさんの絵本「モノレールのたび」 実在の路線をモデルに2年取材 変化に富んだ6.6㎞の旅路を一冊に 坂田未希子
-
展覧会、もっと楽しむ 「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」開催 日本語版出版から50年 ロングセラー絵本の原画を全公開 加治佐志津
-
マンガ今昔物語 「ローワライ」と「君の手がささやいている」 30年を経てろう者の置かれた状況と描かれ方の変化は(第155回) 伊藤和弘
-
トピック 【PR 光文社・創英社・みすず書房・ミネルヴァ書房】プレゼント 朝日新聞1面広告の本、好書好日メルマガ読者計20名様に
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版