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〈オススメ〉ラッセ・レヘトネン『ユーミンと「14番目の月」』

 ユーミン(荒井由実、後に松任谷由実)といえば、作品の芸術性と商業的成功を両立させ活躍を続けるシンガー・ソングライターだ。その立ち位置や影響力をフィンランドの日本音楽研究者が、アルバム「14番目の月」(1976年)を糸口に解き明かす。

 まず、先行する日本の大衆音楽にほぼなかった「自立する女性像」を示したこと。収録曲のヒロインを「クール」「わがまま」など五つのカテゴリーに分類し多様な自立の姿を説明しつつ、それは音楽業界で女性クリエーター参入が進んだ状況の反映とみる。

 洋楽色濃厚な音楽は、「シティポップへの架け橋」とも。確かに、有名な収録曲「中央フリーウェイ」の、転調を繰り返し中ぶらりんに終わる響きは、今なお新鮮だ。=加藤賢、アニータ・ドレックスラー訳、平凡社・2420円(星野学)=朝日新聞2025年5月17日掲載