半世紀以上前に放映が始まり、今も再放送されている「刑事コロンボ」。主人公はよれよれのレインコートで現れ、小さな糸口から犯人を追いつめていく。銃は持たない。
脚本家2人が発案し、ピーター・フォークが演じた作品は、完成度が高かった。現場は息が合っていると見えたが、実際は衝突が続き、仲間は去り、フォークは多くの役割を一人で担った――。関係者の取材や資料で明らかになった舞台裏だ。
1968年から全69作に及んだシリーズは、フォークが2011年に83歳で逝く前に、命尽きていた。かつての大衆文化は「暴力が少なく、上品で、忍耐強いもの」だった。時が経ち、好みは変わったのだ。だが、「最盛期の『刑事コロンボ』は、いつになっても魅力的だ」と著者は書く。(石田祐樹)=朝日新聞2025年6月7日掲載
