姉さん女房が増えている。「人口動態統計」を見ると、2017年に結婚(初婚)した夫婦のうち24.0%は妻が年上。妻が4歳以上も上という夫婦も6.5%いて、それほど珍しいわけではない。
女性を主人公に、大幅に年下の男性との恋愛を描いた作品には、たとえば90年代に「花とゆめ」(白泉社)で長期連載した『オトナになる方法』(山田南平)があった。女子高生の久美子と男子小学生・真吾の恋愛を描いた異色作で、ふたりの年齢差は7歳。小学生を彼氏にする女子高生は滅多にいないと思うが、お互い社会人になれば女性が7歳上というカップルも全然アリだろう。実際、久美子と真吾も最終的にはめでたくゴールインしている。
2015年に「月刊アクション」(双葉社)で始まり、今年「ヤングマガジン」(講談社)へと出版社を変えて移籍連載したことも話題を呼んだ『私の少年』(高野ひと深)では、30歳のOL聡子と小学6年生の美少年・真修(ましゅう)の独特の関係が描かれる。ふたりの年齢差は実に18歳! 親子ほど違う、といっても過言ではない。ここまで年下の男との交流をテーマにした作品は過去に例がないだろう。
スポーツメーカーに勤める聡子は、夜の公園でサッカーの練習をしていた真修に出会い、練習に付き合うように。何年も恋人を作らず一人暮らしを続けている聡子と、早くに母を亡くした上に父が留守がちの真修。それぞれの孤独に触れ、ふたりはともに過ごす時間が増えていく。ところが、その奇妙で親密な関係が問題になり、聡子は仙台に転勤させられる。それから2年後、中学生になった真修は修学旅行で仙台を訪れて――。
ふたりの関係を短い言葉で説明するのは難しい。少なくとも、『オトナになる方法』と違って「恋人」というわけではない。彼らが抱えている感情は「男女の恋愛」でもなく、「擬似的な親子愛」でもなく、もちろん「単なる友情」でもない。しかし、それは極めて切実で深い愛情であり、お互いをなくてはならない存在と感じている。
もともとの年齢差に加えて地理的な距離まで開き、さらに維持が難しくなってしまったふたりの関係は今後どう変化していくのか? 真修の父や同級生の菜緒(なお)など、脇を固めるキャラクターも類型的ではなく、それぞれの行動に説得力とリアリティーがある。少女のような美少年である真修に対して、美人だがクールで厳しそうな聡子のルックスもいい。
そういえば、フランスのマクロン大統領には25歳上の夫人がいるのだった。そんなことも――あるかもしれない。