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「すいません、ほぼ日の経営。」 「幸福」が基準の資本主義を目指す

『すいません、ほぼ日の経営。』 [聞き手]川島蓉子 [語り手]糸井重里

 糸井重里氏が社長を務める「ほぼ日」は、ウェブ上の「ほぼ日刊イトイ新聞」、大ヒットした「ほぼ日手帳」などの独自商品、イベント開催と、顧客に「いい時間」を提供する事業を幅広く手がける。
 昨年の上場後の自身の変化を、やや無責任な「おじさん成分」から、責任を負う「お父さん成分」が必要になったと表現するなど、糸井ワールド全開で語る経営論だ。
 ほぼ日とは「『場』をつくる会社だ」と、事業を人々が出会う「場」としてとらえ、社員や顧客を「仲間」と呼ぶ。
 印象的なのは、「おもしろい」「うれしい」「よろこぶ」といった人の感情をシンプルに表す言葉が大切にされていることだ。アイデアが面白ければ、やりたい人が手を挙げ、メンバーを集め、実現する。
 上司の承認を得るための企画書も会議もない。組織上の手続きが重視される一般的企業とは対照的だ。
 「社風がつまらなくなる」と反対された上場も、「親しい知人」のような株主による「『幸福』を基準とした資本主義」を目指すとは、株主資本主義へのアンチテーゼか。
 カンパニーとは元来、「仲間」の意味。ユニークに見えて、会社(カンパニー)の始原的(プリミティブ)なあり方を見る思いもする。=朝日新聞2018年11月10日掲載