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「血みどろ絵」以外の魅力、伝えたい 菅原真弓さん「月岡芳年伝」

菅原真弓さん

 「最後の浮世絵師」と呼ばれた月岡芳年(つきおかよしとし)(1839~92)に関する研究を集成し、その全貌(ぜんぼう)に迫った「月岡芳年伝 幕末明治のはざまに」(中央公論美術出版)を出した。凄惨(せいさん)な場面を描く「血みどろ絵」で根強いファンがいる芳年だが、西南戦争錦絵や歴史画、美人画へも光を当てることで「『血と狂気』のレッテルから解き放ちたかった」と話す。総文献目録や作品一覧も付した決定版だ。
 芳年との出会いは大学時代。マンガ家の花輪和一と丸尾末広の作品を通して、芳年の「血みどろ絵」を見たのがきっかけだった。江戸時代の浮世絵師、歌川国芳(うたがわくによし)で卒論を書いた後、指導教授の勧めもあり、門下の芳年で修士論文を書くことに。だが、美術史上の評価は低く、「彼の誤解を解いてあげたい、と思ったのが最初でした」と笑う。
 明治期の浮世絵は欧州でジャポニズムの波に乗った葛飾北斎らと比べても新しすぎ、芳年も長く「無視されていた」。三島由紀夫らの手によって特異なかたちで脚光を浴びる。「いまもファンがいるのは、彼の作品がどこか古くさくないからだろうと思います」(山崎聡)=朝日新聞2018年12月5日掲載