前衛短歌の旗手、塚本邦雄(1920~2005)の歌を一首ずつ掲げ、折々の心情とともに読み解くエッセー集『レダの靴を履いて』(書肆侃侃房〈しょしかんかんぼう〉)を出した。独特の美意識が信奉者を集める一方、難解とも言われる塚本短歌を軽やかに読みほどく。
本のタイトルは、塚本の短歌「ゆきたくて誰もゆけない夏の野のソーダ・ファウンテンにあるレダの靴」から。ソーダ水を売る喫茶店の風景にギリシャ神話の登場人物(レダ)を詠み込み、「ここではない、どこか別の世界。ファンタジックな感じのする、一番好きな歌です」。87年、塚本が大阪で開いた文化講座で「読み方は自由でいい。それが短歌の醍醐味(だいごみ)だ」と教わり、師事した。2010年の夏から約2年、ブログに一首鑑賞のエッセーを連載。移ろう季節や日々の出来事に照らしながら、「いま」に読み直した。
現在は、塚本が創刊した歌誌「玲瓏(れいろう)」の撰者(せんじゃ)と編集委員を務める。「前衛とひとくくりにしないで、短歌でこんな遊びもできるよという面白さを伝えたい」(山崎聡)=朝日新聞2019年10月10日掲載
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