前衛短歌の旗手、塚本邦雄(1920~2005)の歌を一首ずつ掲げ、折々の心情とともに読み解くエッセー集『レダの靴を履いて』(書肆侃侃房〈しょしかんかんぼう〉)を出した。独特の美意識が信奉者を集める一方、難解とも言われる塚本短歌を軽やかに読みほどく。
本のタイトルは、塚本の短歌「ゆきたくて誰もゆけない夏の野のソーダ・ファウンテンにあるレダの靴」から。ソーダ水を売る喫茶店の風景にギリシャ神話の登場人物(レダ)を詠み込み、「ここではない、どこか別の世界。ファンタジックな感じのする、一番好きな歌です」。87年、塚本が大阪で開いた文化講座で「読み方は自由でいい。それが短歌の醍醐味(だいごみ)だ」と教わり、師事した。2010年の夏から約2年、ブログに一首鑑賞のエッセーを連載。移ろう季節や日々の出来事に照らしながら、「いま」に読み直した。
現在は、塚本が創刊した歌誌「玲瓏(れいろう)」の撰者(せんじゃ)と編集委員を務める。「前衛とひとくくりにしないで、短歌でこんな遊びもできるよという面白さを伝えたい」(山崎聡)=朝日新聞2019年10月10日掲載
編集部一押し!
- 売れてる本 最相葉月「母の最終講義」 人生の後半期に想いを馳せて 岡田育
-
- 子どもの本棚 上橋菜穂子さん「私は地図も描かない。見えているのは風景」 講演で創作手法を語る 朝日新聞文化部
-
- 朝宮運河のホラーワールド渉猟 令和の時代の〈村ホラー〉を楽しむ3冊 横溝正史的世界を鮮やかに転換 朝宮運河
- 展覧会、もっと楽しむ 「かがくいひろしの世界展」開幕 4年で16作! 日本中の子どもたちに笑顔を届けた絵本作家の創作に迫る 加治佐志津
- 滝沢カレンの物語の一歩先へ 滝沢カレンの「ゴドーを待ちながら」の一歩先へ ウラジとエス、カードゲームに熱中して沖合に流され… 滝沢カレン
- ニュース まるみキッチンさんが「やる気1%ごはん」で史上初の快挙!「第11回 料理レシピ本大賞 in Japan」授賞式レポート 好書好日編集部
- トピック 【直筆サイン入り】待望のシリーズ第2巻「誰が勇者を殺したか 預言の章」好書好日メルマガ読者5名様にプレゼント PR by KADOKAWA
- 結城真一郎さん「難問の多い料理店」インタビュー ゴーストレストランで探偵業、「ひょっとしたら本当にあるかも」 PR by 集英社
- インタビュー 読みきかせで注意すべき著作権のポイントは? 絵本作家の上野与志さんインタビュー PR by 文字・活字文化推進機構
- インタビュー 崖っぷちボクサーの「狂気の挑戦」を切り取った9カ月 「一八〇秒の熱量」山本草介さん×米澤重隆さん対談 PR by 双葉社
- インタビュー 物語の主人公になりにくい仕事こそ描きたい 寺地はるなさん「こまどりたちが歌うなら」インタビュー PR by 集英社
- インタビュー 井上荒野さん「照子と瑠衣」インタビュー 世代を超えた痛快シスターフッドは、読む「生きる希望」 PR by 祥伝社